読みもの ・
紅葉の京都に行けない人に。京都が舞台の小説5冊
鬼を使う大学のサークル、寺町の骨董品店、宇治の吹奏楽部、記憶のずれる町、四通りの大学生活。京都でしか起きない話を五冊選びました。
秋になると京都へ行きたくなるのに、人の多さを思うと腰が重い。そんな年もあります。小説の京都は、観光の京都とは少し違う顔をしている。ここでは、大学や部活、古い店、坂の多い町といった、住んでいる人の目線から京都を書いた小説を集めました。笑える京都もあれば、ぞっとする京都もある。迷ったら五冊目からどうぞ。

1『鴨川ホルモー』
京大に入ったばかりの安倍は、新歓コンパに釣られて妙なサークルに入ります。そこで待っていたのは、目に見えない小さな鬼を操って、ほかの大学と戦わせる競技でした。掛け声にも作法にも細かい決まりがあり、それを誰もが真顔で守る。古都の格式を、ばかばかしい遊びで受け止める青春ものです。

2『京都寺町三条のホームズ』
京都に越してきた女子高生の葵が、お金に困って祖父の骨董を売りに行った先は、寺町三条の小さな店でした。店番の大学院生は、品物を見る目と同じ鋭さで、葵が隠していた事情まで言い当てます。そのまま店でアルバイトを始めた葵と一緒に、町の名所や行事をめぐりながら謎を解いていく軽い一冊です。

3『響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ』
舞台は京都府宇治市の高校の吹奏楽部。長く強くなかった部に新しい顧問が来て、まず全国を目指すかどうかを部員の多数決で決めさせます。目指すと決めたあとの練習は厳しく、先輩と後輩の間にも、オーディションをめぐる緊張が走る。部活の気まずさまで書いた音楽の青春小説です。

4『深泥丘奇談』
京都に住むミステリ作家の「私」の身のまわりで、見慣れた病院や神社や坂道が、少しずつ記憶と食い違っていきます。一話ずつ別の怪異が起きるのに、同じ土地と人が何度も顔を出す。知っているはずの町が、読むうちに知らない町に変わる連作の怪談です。

5『四畳半神話大系』
京都の大学に通う「私」は、ばら色の学生生活を思い描きながら、悪友の小津に振り回されて二年をむだにしています。章ごとに、入学したときに選んだサークルだけが違う。それでも同じ顔ぶれが、形を変えて現れます。どの道を選んでも、なぜか似たところへ流れ着く長編です。
おわりに
最後の『四畳半神話大系』について。ほかの四冊は、京都の町で一つの出来事を追っていきます。この本は、同じ京都の同じ二年間を、四回やり直して見せます。同じ人物と同じ小道具が、章ごとに別の役目で戻ってくる。古風な語り口には癖があり、合うかどうかは最初の章で分かるはずです。近くの図書館で借りられるかどうかも、本のページから確かめられます。