あらすじ
一編ごとに独立した怪異が描かれますが、同じ土地と人物が繰り返し出てきます。読み進めるうちに、語り手の住む京都が現実の京都とどこか違うらしいと分かってくる。地名や坂の名前が効果的に使われています。
読みどころ
自分の記憶のほうが間違っているのではないかと疑わせるタイプの怪談です。館シリーズとは作風がまったく違うので、別の作家の本として読んだほうが楽しめます。
こんな人に
おすすめしたいのは。日常が少しずつ狂っていく話が好きな人。
続編に『深泥丘奇談・続』があります。館シリーズは『十角館の殺人』から。
向かないかもしれない人
一編ごとの怪異にはっきりした説明はつかず、現実がずれていく感覚が中心。館シリーズのような謎解きの決着や、派手な怪物の怖さを求める人には肩透かしになりうる。
比べ読み
『残穢』小野不由美
どちらも住まいや見慣れた町がじわりと歪む怪談。『残穢』は部屋の過去を調べて土地の記憶を何十年もさかのぼり、本作は語り手の記憶そのものを疑わせる。調査の手順を追って怖がりたいなら残穢、日常のずれに足元をすくわれたい時は本作を。
『恐怖小説 キリカ』澤村伊智
作家が語り手という点で重なる。『恐怖小説 キリカ』は著者と同じ名を持つ作家が自分に起きたことを書き、作り話という言い方そのものを疑わせる。本作は京都の地名や坂を使って現実の町とのずれを作る。仕掛けの驚きならキリカ、じわじわ来る違和感なら本作。













