読みもの ・
放課後に戻りたい大人に。部活の小説5冊
野球、剣道、吹奏楽、合唱、そして駅伝。勝ち負けよりも、誰かと一緒に何かを続けた日々が残る五冊を選びました。
部活の話というと、大会で勝つまでの物語を思い浮かべるかもしれません。けれど読み返したくなるのは、うまくいかない相手と毎日同じ場所にいる時間のほうだったりします。一人で投げたい投手、正反対の剣道部員、口数の少ない打楽器の子、手紙を書かされる合唱部。最後に、部員集めから始まる駅伝の話を置きました。いちばん勧めたいのはその一冊です。

1『バッテリー』
岡山の町に越してきた中学入学前の原田巧は、自分の球しか信じていない投手です。その球を受けると言い出したのが、同い年の永倉豪でした。仲間がいなくても平気な少年が、組む相手を持ってしまう話で、巧の扱いにくさにいらいらしながら、目が離せなくなります。

2『武士道シックスティーン』
勝つことしか考えていない磯山香織と、楽しく続けられればいい西荻早苗。同じ剣道部に入った二人の言葉が、章ごとに入れ替わります。同じ稽古を、一人は「戦い」と言い、もう一人は「楽しい」と言う。その食い違いが、そのまま読みどころです。

3『屋上のウインドノーツ』
人の輪に入れずにいた志音が、屋上で知り合った大志に誘われて、吹奏楽部で打楽器を受け持つことになる。歩きながら吹き、叩くマーチングの練習は、思っていたよりずっと体を使います。話すのが苦手なままでも、音でなら加われる。そういう居場所の見つけ方を書いた一冊です。

4『くちびるに歌を』
五島列島の中学の合唱部に、もとピアニストの柏木先生が代わりの先生としてやってきます。先生がコンクールまでの課題に出したのは、十五年後の自分にあてた手紙。部員それぞれが家で抱えていることが、歌の練習と並んで少しずつ見えてきます。

5『風が強く吹いている』
古いアパートに住む大学生十人で、箱根駅伝に出る。言い出したのは四年生の清瀬灰二で、ほとんどの住人は陸上をまともにやったことがありません。走る理由が十人とも違うまま、一本のタスキをつないでいく。厚い本なのに、後半は一気に読んでしまいます。
おわりに
最後の『風が強く吹いている』について。前の四冊が「ひとつの部の中」の話だとしたら、この本は、走ったことのない人たちを口説き落とすところから始まります。部活ものの中から一冊を選べと言われたら、迷わずこの本です。置いている書店や図書館は、本ごとのページに載せています。