棚の前で/読みもの/給料日の前の夜に。お金に振り回される小説5冊

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給料日の前の夜に。お金に振り回される小説5冊

当たった三億円、支店から消えた百万円、子どもにかけられた保険、消えた婚約者の自己破産、客の預金に伸びた手。お金が人を動かしていく五冊です。

財布の中身を見たくない夜に、お金の話を読むのも悪くありません。ここに並べたのは節約や投資の本ではなく、お金のせいで人が動いてしまう小説です。大金が手に入る話から始めて、手元の数万円で踏み外す話で終わる並びにしました。順に読むのがいちばんですが、時間がなければ最後の本だけでも。

『億男』の書影

1『億男』

川村元気/文春文庫 おすすめ度 ★★★☆☆

兄の借金を背負った図書館員の一男が、宝くじで三億円を当てます。ところが相談した親友の九十九が、その金ごと姿を消してしまう。行方を追う一男は、富を手にした人たちに次々と会っていきます。お金があれば幸せになれるのかを、人に会いながら考える長編です。

『シャイロックの子供たち』の書影

2『シャイロックの子供たち』

池井戸潤/文春文庫 おすすめ度 ★★★★☆

東京第一銀行の長原支店で、現金が百万円なくなります。話は一話ごとに主役が替わり、融資の成績や出世、家の事情に追われる行員たちの顔が見えてくる。お金を扱う職場で、人のほうが先にすり減っていく連作です。

『黒い家』の書影

3『黒い家』

貴志祐介/角川ホラー文庫 おすすめ度 ★★★★☆

生命保険の査定をしている若槻は、顧客に呼ばれた家で、子どもの遺体を見つけてしまいます。その子には保険がかかっていました。そばにいた父親の様子も頭から離れず、若槻はひとりで調べ始める。保険金のために人の命を使う者がいるのかという疑いが、怖さの出どころです。

『火車』の書影

4『火車』

宮部みゆき/新潮文庫 おすすめ度 ★★★★☆

休職中の刑事の本間が、遠縁の青年に頼まれて、姿を消した婚約者を探します。彼女は過去の自己破産が明るみに出た直後にいなくなっていました。足どりを聞いて回るほど、名前と本人が合わなくなっていく。借金が人の暮らしをどこまで追いつめるかを、人探しの形で見せるミステリです。

『紙の月』の書影

5『紙の月』

角田光代/ハルキ文庫 おすすめ度 ★★★★☆

銀行の契約社員の梅澤梨花は、まじめな外交員として客に信頼されています。年下の男性と関わるうちに、立て替えのつもりで客の金に手をつける。最初は数万円でした。額がふくらんでいく道すじを、本人の理屈のままたどる長編です。

おわりに

最後の『紙の月』について。ほかの四冊のお金は、当たったり消えたり、誰かに狙われたりするものでした。この本では、お金は自分の手で少額から動かすものです。悪人の話ではなく、自分の値打ちを金額で測ってしまう人の話として読めるところが、いちばん怖い。給料日が待ち遠しい晩に、読んでみてください。貸出の有無は本のページから調べられます。