あらすじ
手がかりを辿るうちに、本間は妙なことに気づきます。婚約者が名乗っていた名前の持ち主と、実際にいなくなった女性が、どうも同じ人物ではない。では、彼女は誰だったのか。そして本物は、どこへ行ったのか。本間は警察の看板を使えないまま、聞き込みだけで二人の女性の過去をたどっていきます。
読みどころ
発表は1992年ですが、カードローンや多重債務の仕組みの説明は今読んでも古びていません。「お金の失敗は誰にでも起こりうる」という怖さが、じわじわと効いてきます。最後に探していた人物がどう描かれるか、その幕の引き方も語り草になっています。
こんな人に
おすすめしたいのは。お金と人生の関係を、ミステリで考えてみたい人。
文庫でも厚めですが、途中でだれることはありません。同じ作者の『理由』も、社会の仕組みを事件から描いた長編です。
向かないかもしれない人
文庫でも厚く、カードローンや多重債務の説明がたびたび入ります。名探偵の推理劇を期待する人や、お金の失敗の話が身に迫りすぎてつらい人には、重く長く感じられるかもしれません。
比べ読み
『検事の本懐』柚月裕子
星の並びが同じで、どちらも法と社会の仕組みに踏み込みます。『検事の本懐』は父の事件を背負った検事が筋を通し続ける連作で、裁く側の視点。『火車』は消えた婚約者の足取りを追ううち、借金の仕組みの怖さが見えてくる長編です。正義の在り方を読むなら柚月作品、お金にまつわる転落を読むなら宮部作品から。
『13階段』高野和明
『13階段』は刑の執行までという期限がある冤罪調査で、追い立てられる緊張が持ち味です。こちらは期限より、聞き込みを重ねて二人の女性の過去を掘る粘りが持ち味。速い展開で読みたいなら高野作品、じわじわ広がる怖さを味わいたいなら宮部作品を選ぶと好みに合います。














