読みもの ・
秋の夜長に、ひと晩で読み切れる小説5選
寝る前に読み始めて、その夜のうちに閉じられる本を五冊。短編集や中編、薄めの長編から、ジャンルをばらけて選びました。
夜が長くなってきました。長編を一気読みするのもいいのですが、今回は寝る前に開いて、その夜のうちに閉じられる本に絞っています。選んだのは、棚の前での分量の区分で「軽い」に入る本だけ。ホラー、家族もの、ミステリ、短編集、美術の話と、気分で選べるように散らしました。

1『秋の牢獄』
季節に合わせるなら、まず題名どおりの一冊。表題作は、十一月七日から抜け出せなくなった大学生の話です。同じ一日を何度も過ごしている人がほかにもいると分かるところから、話が動き出します。三編とも短く、怖さより寂しさが残る。夜がいちばん似合う本だと思います。

2『幸福な食卓』
朝の食卓で父が「父さんをやめる」と言い出す、少し変わった家族の話。四つの章に分かれているので、一章ずつ区切って読めます。つらい出来事も出てきますが、語り口がさっぱりしているので、夜に読んでも気持ちが沈みきりません。

3『真実の10メートル手前』
ミステリが読みたい夜に。記者の太刀洗万智が取材の中で出会う事件を集めた六編です。推理の手がかりはほとんど会話の中にあって、一編ごとにきちんと閉じる。解けたあとで記事にするかどうかを迷う主人公の姿が、この本の後味になっています。

4『噛みあわない会話と、ある過去について』
四つの短編で、どれも昔の知り合いと再会する話です。相手の記憶と自分の記憶が、話すほど食い違っていく。短くてすぐ読めるのに、自分にも同じことがなかったかを考えてしまい、かえって眠れなくなるかもしれません。

5『常設展示室』
静かに閉じたい夜はこれ。六人の女性が、それぞれ美術館の一枚の絵の前に立つ短編集です。出てくる絵はどれも実在するので、一話読むごとに画像を探したくなる。秋に美術館へ行く予定がある人は、その前に読んでおくと楽しみが増えます。
おわりに
どれも短いので、合わなければ次の一冊に移ればいい。気になった本は、それぞれのページで近くの書店の在庫や図書館の貸出状況も見られます。