読みもの ・
ラノベを読んだことがない大人に。最初の5冊
表紙で身構えてしまう人に、一冊目として渡しやすいライトノベルを五冊。読み口の軽いものから順に並べました。
ライトノベルは表紙が気になって手に取りにくい、という声をよく聞きます。けれど、中身は大人が読んでも十分に重い本が、あの棚にはいくつも並んでいます。その中から選んだのがこの五冊。海辺の町の中学生、静かな島の高校生、見え方の違う親友、魔物と少女の童話、そして空の冒険。四冊目までで棚の空気に慣れてもらい、本命は五冊目に置きました。

1『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』
海辺の町に住む中学二年生と、自分は人魚だと言い張る転校生の話です。もとはライトノベルのレーベルで出て、いまは一般の角川文庫で読めます。題名の「砂糖菓子の弾丸」が何を指しているのか分かったとたん、甘い言葉の裏にある子どもの無力さが急に痛くなる。短いので一晩で届きます。

2『いなくなれ、群青』
どうやって来たのか誰も覚えていない島で、悲観的な高校生と、まっすぐすぎる幼なじみがぶつかる話。謎を追う形で進みますが、最後まで問われ続けるのは「自分は何を捨ててきたのか」のほうです。大きな声を出す人物がほとんどいないので、静かな小説が好きな人ほど合うと思います。

3『紫色のクオリア』
仲のいい友だちが、ほかの人間をみんな機械として見ている。そんな少し不思議な学園ものとして始まりますが、読むほどに話の大きさが変わっていきます。『SFが読みたい!』のベスト10に入ったこともあり、ラノベの棚からSFを探す人によく挙げられる一冊です。少し頭を使う読書をしたい夜に。

4『ミミズクと夜の王』
額に焼き印のある少女が、魔物の森の王に「食べてほしい」と頼むところから始まる話。電撃小説大賞で大賞をとったデビュー作で、いまはメディアワークス文庫の完全版で読めます。言葉づかいは童話に近く、文も短いので迷わずに進めます。ラノベと聞いて思い浮かべるものから、いちばん遠い一冊かもしれません。

5『とある飛空士への追憶』
身分の低い傭兵の飛行機乗りが、次の皇妃になる女性を二人乗りの偵察機に乗せ、敵国の空を越えて送り届ける話です。海に降りて夜を明かし、敵の戦闘機から逃げ、嵐を抜ける。一冊のなかで冒険と恋がきちんと終わるので、続きを追いかける必要もありません。
おわりに
最後の『とある飛空士への追憶』について。後ろの席に座る相手と、身分のせいで言葉ひとつ交わせない。その距離が空の上で少しずつ縮んでいくのを、ただ見守る本です。ラノベを一冊も読んだことのない人に渡すなら、迷わずこれです。書店や図書館に置いてあるかは、本ごとのページの下で調べられます。