読みもの ・
読書週間に。本と本屋が出てくる小説5冊
下町の古書店の大家族、市立図書館の閲覧室の事件、本の迷宮へ向かう高校生と猫、結末のない五つの小説、北鎌倉の古書店の謎解き。本そのものが話を動かす五冊です。
秋の読書週間に合わせて、本を読む人や本を売る人が出てくる小説を集めました。古書店、図書館、本の迷宮と、場所はそれぞれ違います。共通しているのは、一冊の本が人の事情や事件の手がかりになるところです。にぎやかな家族ものから始めて、静かな謎解きで終わる並びです。迷ったときは五冊目から。

1『東京バンドワゴン』
東京の下町で古本屋を営む堀田家には、四つの世代が一つ屋根の下に暮らしています。店に持ちこまれる古書の相談や、ご近所のもめごとが、季節ごとに一つずつ片づいていく。見守っているのは、もうこの世にいないおばあちゃんという、少し変わった語りの連作です。

2『図書館の殺人』
試験の季節、市立図書館で大学生が殺されます。そばには、開かれたままの本が一冊残されていました。探偵役は、図書館の造りと司書の話、本の並びや返却の手順を一つずつ確かめていく。図書館の決まりごとを知るほど、推理に近づけるシリーズ三作目です。

3『本を守ろうとする猫の話』
亡くなった祖父の古書店にひとり残された高校生の林太郎のもとへ、口をきく虎猫がやってきます。頼まれたのは、閉じこめられた本を助け出すこと。四つの迷宮で待つ相手と、林太郎は言葉だけで渡り合います。本をどう読むかという問いを、冒険の形で差し出す長編です。

4『追想五断章』
大学を休んで古書店を手伝っている芳光が、ある女性から、亡くなった父親の書いた短い小説を探してほしいと頼まれます。どれも、結末をわざと書かずに読者へ預ける形の話でした。五つの断片を集めるうちに、二十年前の出来事が見えてくる静かなミステリです。

5『ビブリア古書堂の事件手帖 栞子さんと奇妙な客人たち』
祖母の遺品の漱石全集に書かれた署名は本物なのか。それを確かめに、大輔は北鎌倉の古書店を訪ねます。店主の栞子は人前では口ごもるのに、本の話になると止まりません。古い本の傷みや書きこみから、持ち主の秘密を読み解いていく謎解きの一冊です。
おわりに
最後の『ビブリア古書堂の事件手帖』について。ほかの四冊でも本は大事な役を持っていますが、この本では実在する古書がそのまま謎の中心に置かれます。読み終えると、作中に出てきた本のほうも手に取りたくなる。読書週間の一冊目にちょうどいい本です。借りて読みたい人は、各書のページに出ている区立図書館の所蔵を見てください。