読みもの ・
怖いのが苦手な人に。怖すぎないホラー小説5選
不思議な出来事は起きるけれど、読み終えると温かさや懐かしさが残る。ホラーの棚に並んでいる、やさしい五冊です。
ホラーと聞くと身構える人も多いと思います。ただ、ホラーの棚には怖がらせることより、人の後悔や情を書くために怪異を使っている本もたくさんあります。今回は、夜中にトイレへ行けなくなるような本は外しました。怪談の入口として試してみてください。

1『花菱夫妻の退魔帖』
大正時代、顔も知らずに嫁いだ鈴子と、華族の当主の孝冬。わけありの夫婦が、持ち込まれる怪異を一件ずつ片づけていきます。怪異の話と同じくらい、二人が少しずつ打ち解けていく過程に比重がある。時代ものの恋愛小説として読んでもかまいません。

2『営繕かるかや怪異譚』
古い家で起きる障りを、お祓いではなく大工仕事で収める営繕屋の連作です。怖い場面はしっかりあるのに、家が直るたびに住む人の気持ちも落ち着いていく。六編とも短く、一話ずつ読み終えられます。古い町家や路地の描写が好きな人にも。

3『かたみ歌』
昭和の下町、アカシア商店街で起きる七つの不思議。亡くなった人がふと帰ってくるような話が、怖さよりも懐かしさを連れてきます。話と話が町の人でつながっていて、最後まで読むと商店街全体が一つの物語だったと分かる。

4『花まんま』
昭和の大阪を舞台にした短編集で、この本で第133回直木賞を受けています。小さな妹が、自分には前の人生があると打ち明け、兄が付き添ってその土地を訪ねる。不思議な出来事に説明はつかないまま、家族の話として閉じていきます。泣ける話が苦手でなければ、ここから。

5『夜市』
最後は、ホラーの賞を受けたのに怖さの印象がほとんど残らない一冊。何でも売っている夜の市場に迷い込む話で、残るのは異界の静けさと切なさです。二編だけの薄い本なので、ホラーを試すにはいちばん気軽です。
おわりに
ここから慣れてきたら、同じ作者のほかの本を少しずつ怖いほうへたどっていくのもいいと思います。