あらすじ
時代は昭和四十年代あたり。どの話にも町の人々が少しずつ登場し、別の話の脇役が次の話の主役になります。最後の一編を読むと、町そのものが一つの物語だったことが分かる作りです。
読みどころ
不思議な出来事が、人の後悔を救う形で使われているのがこの本の特徴です。ホラーが苦手な人でも読めますが、怪談としての切れ味も残っています。
こんな人に
おすすめしたいのは。昭和の町を舞台にした話が好きな人。
同じ作者の『都市伝説セピア』も、日常の隙間を扱った短編集です。
向かないかもしれない人
怪談の怖さを正面から浴びたい人には、不思議が後悔の救いに使われる作りが穏やかすぎるかもしれない。昭和の下町の空気に郷愁を覚えない人にも響きにくい面がある。
比べ読み
『夜市』恒川光太郎
不思議と切なさが同居する点で近い二冊。「夜市」は何かを買わないと出られない異界の市場が舞台で、怖さより異界の静けさが残る。「かたみ歌」は昭和の商店街に少しだけ不思議が混じる七編で、怪異を人の後悔を救う方向に使う。身近な町に留まりたい気分なら「かたみ歌」、異界へ迷い込みたい夜は「夜市」を。
『幻色江戸ごよみ』宮部みゆき
どちらも一つの町に不思議が混じる短編集。「幻色江戸ごよみ」は江戸の十二か月を十二編で巡り、「かたみ歌」は昭和四十年代の下町を七編で巡る。脇役が次の話の主役になるつながりを楽しむなら「かたみ歌」を先に、時代ものの気分なら江戸の方を。再読性は「かたみ歌」が星一つ上。









