あらすじ
収録は六つの短編。どの話も、古い家に住む人が不思議な出来事に悩まされ、尾端が家を見て、壁や屋根、路地や井戸に手を入れる。怪異の正体がはっきり分かるとは限りませんが、家が直ると、住む人の暮らしもどこか落ち着いていく。
読みどころ
怖い場面はきちんと怖いのに、読み終えるとなぜか温かい気持ちが残る。古い家の細部の描写が丁寧で、建物好きにも楽しい一冊。一話ずつ完結するので、寝る前に一篇ずつ読むのに向いています。
こんな人に
おすすめしたいのは。ただ怖いだけでなく、しみじみしたホラーが読みたい人。
続編の『営繕かるかや怪異譚 その弐』もあります。同じ作者の『残穢』よりも、ずっと優しい手触りの作品です。
向かないかもしれない人
怖い場面はありますが、温かさを残す作りです。逃げ場のない恐怖や、読み手を突き放すような後味を求めるホラー好きには優しすぎるかもしれません。
比べ読み
『秋の牢獄』恒川光太郎
『秋の牢獄』は同じ一日がくり返される設定で孤独を書き、怖さよりも失ったものの感覚が残る作品です。家が直ると暮らしも落ち着いていく『営繕かるかや怪異譚』は、怖さの先に温かさが置かれています。寂しさを味わいたい夜は恒川光太郎、ほっとして眠りたい夜は尾端の連作を選ぶと合います。
『夜行』森見登美彦
『夜行』は十年前に消えた仲間をめぐって旅先の不思議を語り合う連作で、はっきりした答えは出ません。怪異の正体が分かるとは限らない点は共通しますが、こちらは修繕という手立てで一話ごとに区切りがつきます。分からなさを楽しめるなら『夜行』、落ち着く結びを求めるならこちらを先に。











