読みもの ・
映画になった小説5選。原作から読むならこの五冊
映画を観た人にも、これから観る人にも。原作の小説で読むと、映像とは別の手触りがある五冊を選びました。
映画を先に観て、あとから原作を読むと、削られた場面や人物の心の中に気づくことがあります。今回は映画になった小説のうち、原作で読む価値が大きいと思う五冊です。公開年は本のページに書いてあるものだけを載せています。

1『阪急電車』
片道15分ほどの阪急今津線に乗り合わせた人たちの連作で、2011年に映画になりました。往路と復路の二部に分かれていて、ある章の脇役が次の章の主役になる。この「つながっていく」気持ちよさは、原作のほうがはっきり味わえます。

2『八日目の蝉』
赤ちゃんを連れ去った女性の逃亡と、その子が大人になってからの話。ドラマと映画の両方になっています。前半と後半で語る人が入れ替わる組み立てなので、映像で筋を知っていても、原作を順に読むと同じ出来事の重さが変わって見えます。

3『ツナグ』
亡くなった人と一晩だけ引き合わせる仲介役をめぐる連作で、2012年に映画になりました。依頼人ごとに章が分かれ、最後の章で使者の少年自身の事情が明かされる。泣ける話ばかりではなく、会ったことで後悔が深くなる依頼人もいて、そこが原作の強さです。

4『流浪の月』
少女と大学生が一緒に暮らした二か月と、その十五年後を書いた小説。2022年に広瀬すずさんと松坂桃李さんの共演で映画になりました。更紗の心の声が細かく書かれている分、原作ではなぜ彼女が文のそばにいたいのかがよりはっきり伝わってきます。

5『ナミヤ雑貨店の奇蹟』
最後は、映画を観た人にも原作をいちばん勧めたい一冊。廃屋に逃げ込んだ三人組のもとに、過去から悩み相談の手紙が届く話で、2017年に映画になっています。相談者たちが最後に一本の線でつながる構成は、文字で追うほうが驚きが大きい。殺人事件の起きない東野圭吾です。
おわりに
映画を観てから読むか、読んでから観るか。どちらの順でも、二回目のほうが細部に目が届きます。