あらすじ
野々宮希和子は、関係を持っていた男性とその妻の間に生まれた赤ちゃんを連れ去ります。薫と名付けたその子と、身元を隠しながら逃げ続ける日々。前半は希和子の逃亡の記録、後半は大人になった子ども自身の目から語られます。
読みどころ
誘拐という犯罪を描いていながら、そこには血のつながりとは別の場所で育った「母と子」の時間が確かにある。前半と後半で語り手が入れ替わると、同じ出来事がまるで違う意味を帯びて迫ってきます。この構成の効き方には、うなるしかありません。
こんな人に
おすすめしたいのは。家族や母親との関係について、考えたことがある人。
ドラマと映画になっています。後半は前半を読んだあとでこそ響くので、途中で間を空けずに読むのがいいと思います。
向かないかもしれない人
誘拐という犯罪を扱い、家族や母親との関係が正面から問われる。親子関係でつらい経験がある人には負担になりうるし、間を空けて読むと前後半のつながりが薄れやすい。
比べ読み
『流浪の月』凪良ゆう
どちらも世間が「誘拐」と呼ぶ出来事を、当事者の時間から見直す長編。八日目の蝉は連れ去った女の逃亡と、育った子のその後を前後半で語り分けます。『流浪の月』は九歳と十九歳の二か月を軸に、善意の人たちの残酷さへ目を向ける。母と子の関係を考えたいなら本作、世間の目を問いたいなら流浪の月から。
『52ヘルツのクジラたち』町田そのこ
『52ヘルツのクジラたち』では虐待とネグレクトの重さを、声を聴こうとする行為が救いになるという希望が支える。八日目の蝉は血のつながりと別の場所で育った母子の時間を、語り手の交代で照らし直します。希望の手ざわりを先に求めるならクジラ、構成の効き方を味わうなら本作。










