あらすじ
前半は宝塚から西宮北口への往路、後半は半年後の復路。各章に駅名がついていて、ある章の脇役が次の章では主役になります。恋の始まりもあれば、別れを決める人もいる。たまたま同じ車両に居合わせた誰かの一言が、別の誰かの背中を押していきます。
読みどころ
一話が短く、登場人物の関係が駅を追うごとにつながっていくので、パズルがはまっていくような気持ちよさがあります。老婦人の時江さんが、車内で騒ぐ大人たちをぴしゃりと叱る場面は痛快。読後、いつもの通勤電車の乗客が少しだけ違って見えます。
こんな人に
おすすめしたいのは。通勤電車で、つい周りの人の人生を想像してしまう人。
2011年に映画化されました。関西に住んでいる人は、実際に今津線に乗りながら読むのもいいと思います。
向かないかもしれない人
片道十五分の路線を往復する構成で、話は短く区切られています。一人の主人公を深く追う長い話や、大きな事件の起きる展開を求める人には軽く感じられそうです。
比べ読み
『常設展示室』原田マハ
短い話がつながる連作という形は似ています。『阪急電車』は駅ごとに脇役が主役になり、人の関係がパズルのようにはまっていく。『常設展示室』は同じ壁の絵の前に立つ女性たちの六つの話で、美術に詳しくなくても話についていける。通勤の車内ならこちら、美術館帰りなら常設展示室を。
『まほろ駅前多田便利軒』三浦しをん
町の人たちの事情が見えてくる点は近い二冊です。『まほろ駅前多田便利軒』は便利屋を営む男二人のバディものが軸で、行天の読めない振る舞いが笑いを生む。こちらは同じ車両に居合わせた他人どうしが入れ替わりで主役になる。人の組み合わせの妙を楽しむなら阪急電車から。














