棚の前で/読みもの/会いたい人に会えない夜に。離れた二人の小説5冊

PR本ページのリンクにはアフィリエイトが含まれます。

棚の前で

読みもの ・

会いたい人に会えない夜に。離れた二人の小説5冊

海の底にいる恋人、文字だけで知り合った相手、何度も別れては出会い直す幼なじみ、数えるほどしか会えない大人、島と都会に分かれた二人。距離が話を動かす五冊です。

連絡はいつでも取れるのに、会えない人がいる。そんな夜に読むなら、二人のあいだに距離があること自体が、筋の中心になっている小説がいいと思います。ここでは、遠く離れていたり、会うまでに時間がかかったりする二人の話を選びました。軽く読める短編から長い恋愛小説までそろえました。ひとつだけ選ぶなら、最後に置いた本です。

『クジラの彼』の書影

1『クジラの彼』

有川浩/角川文庫 おすすめ度 ★★★★★

表題作で主人公が付き合う相手は、潜水艦の乗組員です。いったん海に出ると連絡はほとんど届かず、いつ戻るのかさえ知らされない。待つしかない側の気持ちを、明るい調子のまま書いているのがこの作者らしいところです。ほかの話の相手も自衛隊の人たちで、仕事が違えば会えない理由も違ってくる。一話ずつ短いので、五冊の中ではいちばん手に取りやすい本です。

『レインツリーの国』の書影

2『レインツリーの国』

有川浩/角川文庫 おすすめ度 ★★★★★

伸行は、昔読んだ小説の感想を探しているうちに、ある人のサイトにたどり着きます。書いていたのは、ひとみという女性でした。メールでのやりとりが続き、いざ会う話になったとき、彼女は自分の耳が聞こえにくいことを打ち明けます。文字ならすれ違わなかった二人が、会ってからぶつかる。距離が縮まったところで話が始まる、少し変わった一冊です。

『光のとこにいてね』の書影

3『光のとこにいてね』

一穂ミチ/文春文庫 おすすめ度 ★★★★★

七歳の結珠と果遠は、古い団地で出会います。育った家も暮らしぶりもまるで違う二人は、一度離ればなれになり、何年もたってからまた出会う。そのあとも、離れては会い直すことをくり返していきます。友だちとも恋人とも呼べないまま、三十年近く相手を思い続ける話です。五冊の中では、いちばん長い時間を追っています。

『マチネの終わりに』の書影

4『マチネの終わりに』

平野啓一郎/文春文庫 おすすめ度 ★★★★☆

クラシックギタリストの蒔野と、パリの通信社で働く洋子。東京で一晩話しただけで、二人は深く惹かれ合います。ただ、洋子には結婚を約束した相手がいるうえ、住んでいる国も違う。メールと電話でつながってはいても、会える機会はほんのわずかです。小さな行き違いひとつで、二人の行き先が大きく変わってしまう。四十歳前後の人の恋なので、仕事や家族の重さも一緒に書かれています。

『汝、星のごとく』の書影

5『汝、星のごとく』

凪良ゆう/講談社文庫 おすすめ度 ★★★★☆

島の高校に通う暁海と、母親の都合でその島へ移ってきた櫂。親のことでずっと苦労してきたという点で、二人はよく似ていて、互いに惹かれていきます。やがて二人は別々の道を選び、暮らす場所も分かれていく。好きな気持ちだけでは埋まらない距離を、二人の側から交互に描いているのがこの本です。話は、十代の終わりから大人になるまでの長い年月にわたります。

おわりに

最後の『汝、星のごとく』について。ほかの四冊では、離れている理由は仕事や体のこと、家の事情など、二人の外にあります。この本では、それに加えて、自分の人生をどう生きるかという二人それぞれの選択が距離になっていく。語り手が入れ替わるたびに、相手の事情が少しずつ見えてきます。どこの図書館にあるか、どこで買えるかは、各本のページにまとめてあります。