あらすじ
二人の関係は、東京、パリ、ニューヨーク、そして紛争の続くバグダッドと、遠く離れた場所をまたいで進む。メールと電話でつながりながら、会えるのはわずかな機会だけ。互いを思う気持ちは確かなのに、ちょっとしたすれ違いが、二人の人生を大きく変えてしまう。
読みどころ
恋愛小説ですが、音楽、戦争、仕事、老いていく親のことまで、四十歳前後の人生にのしかかるものがきちんと書き込まれています。すれ違いの場面では本を置きたくなるほど歯がゆい。そのぶん、最後の場面の余白が胸に残ります。
こんな人に
おすすめしたいのは。若い頃の恋とは違う、大人の恋愛小説を読みたい人。
2019年の映画版では福山雅治と石田ゆり子が二人を演じました。同じ作者の『ある男』もおすすめです。
向かないかもしれない人
すれ違いが何度も重なり、二人がなかなか会えない恋の話です。歯がゆい展開が苦手な人や、恋愛より事件の起伏を求める人には、読む手が止まりがちな場面が多く出てきます。
比べ読み
『汝、星のごとく』凪良ゆう
長い年月の恋を追う二冊です。『汝、星のごとく』は瀬戸内の島で知り合った二人が家族や土地の閉塞感と折り合う話で、視点の入れ替えで読む側だけがすれ違いの理由を知ります。こちらは東京からバグダッドまでをまたぎ、仕事や老いる親も抱えた二人の恋。土地に縛られる苦さなら凪良作品、人生後半の恋なら平野作品を。
『白いしるし』西加奈子
恋を書く温度が対照的な組み合わせです。『白いしるし』は好きになるとき体が先に反応してしまう感覚を整えずに差し出す、一晩で読める短さの長編。こちらはメールと電話でつながる二人の会えない時間を、音楽や戦争も絡めて積み上げます。衝動の強さを読みたい日は西作品、すれ違いの歯がゆさに付き合える日はこちらを。









