読みもの ・
AIと暮らす前に読みたい。人と機械の小説5冊
ロボットの相棒、アンドロイド狩り、戦闘機、心を病んだ人工知能、子どもの友だちのロボット。機械の側から人間を見なおす五冊です。
話しかければ答えてくれる機械が、いつのまにか身のまわりに増えました。便利だと思う一方で、どこまで任せていいのか、相手をどう扱えばいいのか、まだ誰も答えを持っていません。小説は、その問いをずっと前から何度も試してきました。ここでは、機械と組まされる刑事の話から、機械の目で家族を見つめる話まで、五冊を書かれた順に並べています。最後に置いた本を、いちばん強くすすめます。

1『鋼鉄都市』
人があふれた地下の都市で、刑事のベイリは殺人の捜査を命じられます。ところが組まされた相棒は、見た目は人間と変わらないロボットのダニールでした。ロボットは人を傷つけられないという決まりが、そのまま謎解きの条件になる。ロボットに仕事を取られる不安が町じゅうにあるという設定も、いま読むと他人事ではありません。

2『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』
賞金稼ぎのデッカードは、逃げた8体のアンドロイドを追います。見分ける手がかりは、質問への反応から相手の共感の強さを測る検査だけ。検査を重ねるほど、測っている自分のほうがあやしくなっていく。本物の動物を飼いたいのに電気の羊しか持てない、という彼の暮らしの話も並んで進みます。

3『戦闘妖精・雪風〈改〉 愛蔵版』
正体の分からない異星体と戦う空軍で、深井零が心を許しているのは、上官のブッカー少佐と、愛機の〈雪風〉だけです。戦いを見届けて情報を持ち帰るのが仕事の部隊で、零は人間より機体のほうを信じている。本当に戦っているのは人なのか、機械なのかを、章ごとに見る位置を変えながら問いかけてくる連作です。

4『タイタン』
仕事はすべて巨大なAIが引き受け、人は好きなことだけして暮らす23世紀。心理学が趣味の内匠は、調子を崩したAIの一基の話し相手を頼まれます。悩みを聞くはずが、AIのほうから「仕事とは何か」を問い返される。とぼけた会話で笑わせながら、話は思いがけないほど大きくなっていきます。

5『クララとお日さま』
子どもの友だちとして作られたロボットのクララは、店の窓から外を眺めて、人の様子を覚えていきます。やがて体の弱い少女ジョジーの家に迎えられ、そばで家族を見守ることになる。人間をよく見ているのに、どこか少しずれているクララの語りで、家族の優しさと身勝手さが同時に見えてきます。
おわりに
最後の『クララとお日さま』について。前の四冊が、機械とどう戦うか、どう見分けるか、どう働くかを書いているとしたら、この本は機械がどう人を大事に思うかを書いています。五冊のうち一冊から始めるなら、クララの話をすすめます。借りるにも買うにも、どこにあるかは各冊のページに載せています。