あらすじ
デッカードが使うのは感情移入度検査という装置で、質問への反応の速さを測って人間とアンドロイドを見分けます。判定の場面が重なるほど、検査の根拠そのものが揺れていく。並行して進むのは、電気仕掛けの羊しか持てない彼が本物の動物を欲しがる話。
読みどころ
映画版とは筋も結末も違います。原作は共感という機能を持っているかどうかで人を区切ってよいのかという問いのほうに重心があり、マーサー教という宗教も大きな位置を占めています。
こんな人に
おすすめしたいのは。映画を見たあとに原作の違いを確かめたい人。
同じ作者の『高い城の男』も文庫で読めます。映画版は1982年公開です。
向かないかもしれない人
読みやすさは星3です。映画のような追跡劇を期待すると、マーサー教という宗教や共感をめぐる問いの比重に戸惑います。映画版と同じ筋をなぞりたい人にも向きません。
比べ読み
『すばらしい新世界 新訳版』オルダス・ハクスリー
人間とは何かを制度の側から問う二冊です。『すばらしい新世界』は瓶の中で生まれて階級を割り振られる社会の設計そのものを見せ、こちらは検査装置で人とアンドロイドを選り分ける一人の賞金稼ぎに寄り添います。社会の全体図から入りたいならハクスリーを先に、判定する側の迷いを追いたいならディックを。
『一九八四年』ジョージ・オーウェル
どちらも人を区切る仕組みを扱いますが、重さが違います。『一九八四年』は厚く、監視と言葉の統制が社会全体を覆う話。ディックのほうは標準的な厚さで、共感の有無という一本の物差しが揺らいでいく過程に絞られています。息の長い本に向き合える週はオーウェル、映画の原作から入りたい日はこちらを。










