あらすじ
相手は北海道の弟子屈にある「コイオス」。原因の分からない不調で、処理の力が落ちている。内匠はコイオスが話し相手として作った人格と向き合い、どうして調子が悪いのかを聞き出そうとします。ところがコイオスは、そもそも「仕事」とは何なのかを内匠に問い返してくる。二人の対話は、やがて旅のような形をとっていきます。
読みどころ
単行本は2020年。吉川英治文学新人賞と日本SF大賞の候補に挙がりました。働かなくていい世界を舞台にすることで、なぜ人は働くのか、という当たり前すぎて考えない問いが、正面から出てくる。AIとの会話はとぼけていて笑えるのに、話はどんどん大きくなる。その振れ幅が野崎まどらしいところです。
こんな人に
おすすめしたいのは。月曜の朝、仕事に行く理由が分からなくなった人。
同じ作者の『know』も、技術が行き着いた先の社会で「知る」ことを問う長編です。
向かないかもしれない人
話の多くがAIとの対話で進み、「仕事とは何か」という問いを掘り下げる。派手な戦いや事件の連続を期待する人や、とぼけた会話の調子が合わない人には向かないかもしれない。
比べ読み
『クロストーク』コニー・ウィリス
どちらも心のつながりを技術の側から扱い、会話が笑える。「クロストーク」は気持ちが通じ合う手術で別人の声が聞こえてしまう話で、つながりすぎる不快さを喜劇にする。「タイタン」は心を病んだAIとの対話から、人はなぜ働くのかへ話が広がる。軽く笑いたい日は「クロストーク」、仕事について考えたい日はこちら。
『オービタル・クラウド』藤井太洋
「オービタル・クラウド」は現実の技術の延長だけで宇宙テロと国際政治まで広げる話で、手触りは現実寄り。「タイタン」は誰も働かなくていい未来を舞台に、AIとの旅のような対話で進む。今の技術の地続きを読みたいなら「オービタル・クラウド」、遠い未来から今の働き方を見直したいならこちら。星の評価は同じ。









