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引っ越しを考えている日に。家がこわくなる小説5冊
丘の上の古い家、作家が借りた洋館、居心地のよすぎる幼なじみの家、音のするマンションの一室、間取りのおかしい中古住宅。家そのものが怖さの出どころになる五冊です。
家は、いちばん気を抜いていい場所のはずです。その家が信じられなくなると、逃げこむ先がなくなる。ここでは、幽霊よりも家や部屋そのものが怖さの中心にある小説を選びました。静かな連作もあれば、資料を読み解いていく形のものもあります。とくに推したいのは最後の一冊です。

1『私の家では何も起こらない』
丘の上の古い二階建てには、これまで何人もの住人が暮らし、そのたびに恐ろしいことが起きてきました。それでも今そこに住む女性作家は、自分の家では何も起こらないと言います。章ごとに語り手も時代も替わり、読み終えるころには、家そのものが主人公に見えてくる連作です。短いので、ホラーの入口にもなります。

2『忌館 ホラー作家の棲む家』
著者と同じ名前のホラー作家が、古い洋館を借りて小説を書きはじめます。すると、書いている話の中の出来事が、家の中でも起こりはじめる。本文には作中の小説がそのまま挟まっていて、現実と作中のどっちが先なのか、読む側まで見失っていく。三津田信三のデビュー長編です。

3『ししりばの家』
引っ越した先でひとりぼっちだった果歩は、たまたま再会した幼なじみの家に招かれます。家族はみんな穏やかで、果歩はすぐにそこへ馴染んでしまう。ただ、その家ではどこにいても、細かい砂の感触がついて回ります。居心地がいいこと自体が怖いという、少し変わった形のホラーです。

4『残穢』
怪談を書く作家の「私」に、読者から手紙が届きます。マンションの自分の部屋で、誰もいないのに畳をこする音がするという。二人は同じマンションのほかの部屋や、その土地に前に建っていた家の住人をたどり、記録と聞き取りを重ねていきます。調べるほど、原因がもっと古い時代へ広がっていくのがじわじわ効いてくる長編です。

5『変な家』
知人が買おうとしている中古の家の間取り図を、書き手が設計士の栗原に見せるところから始まります。窓のない部屋や二階の妙な扉があり、何に使うのか分からない空間まである。図面だけを手がかりに、そこに住んでいた人が何をしていたのかを推理していく本です。ページのあちこちに図面が載っていて、読む側も一緒に考えながら進めます。
おわりに
最後の『変な家』について。ほかの四冊の家では、音がしたり、話が混ざったりと、何かが起きます。この本では怪奇現象は起きません。この部屋はいったい何に使われていたのか、怖さはその問いだけから来ます。図面を指でなぞりながら読むのがおすすめです。図書館の所蔵や買える店は、それぞれの本のページに載せています。