あらすじ
台所で起きた姉妹の出来事、子どもたちが消えた話、家に惹かれて訪れる人々。時代も語り手もばらばらの短い話が重なって、一軒の家の長い歴史が浮かび上がります。そこに今住んでいる作家の女性は、この家の噂をどう受け止めているのか。
読みどころ
はっきり血が流れる場面もありますが、全体の読み心地は冷たい水の底をのぞいているような、静かな怖さです。短くて文章も美しいので、ホラーをあまり読まない人の入口にもなります。
こんな人に
おすすめしたいのは。幽霊屋敷の話を、上品な文章で味わいたい人。
一冊が薄く、一晩で読み切れます。同じ作者の『夜のピクニック』とはまるで違う、恩田陸の暗いほうの顔です。
向かないかもしれない人
物語性は星3で、筋をたどる手応えより語りの雰囲気で読ませる本です。謎がはっきり解けてほしい人や、血の流れる場面がわずかでも苦手な人は、少し構えておいたほうが安心です。
比べ読み
『夜行』森見登美彦
どちらも答えをはっきり出さない、ひんやりした夜の本です。こちらは一軒の洋館に暮らした人々の記憶が部屋ごとに重なる幽霊屋敷もの、『夜行』は、十年前にいなくなった仲間のことで再び集まった者たちが旅先の不思議を語る形。家の中に閉じた怖さならこちら、旅と夜道の広がりを味わいたいなら森見作品を。
『残穢』小野不由美
家と、そこに積み重なった過去を題材にする点は共通しています。恩田陸の本は薄く、時代も語り手もばらばらの短い話で家の歴史を浮かべる文章重視の作り、『残穢』は記録と聞き取りで土地をさかのぼる調査の形です。一晩で静かに浸るならこちらを、手順を追う怖さを味わいたい人は小野不由美を。












