あらすじ
「私」と手紙の主は、同じマンションのほかの部屋でも、住人が長く居着かないことに気づきます。その土地に以前建っていた家、さらにその前の住人へと、記録と聞き取りをたどっていく。事件が一つ見つかるたびに、原因はもっと古い時代へ、もっと広い範囲へと広がっていきます。
読みどころ
派手な怪物は出てきません。「自分の住んでいる部屋の前には、誰が住んでいたのか」という、誰にでも当てはまる疑問が怖さの芯になっています。読み終えたあと、自宅の床や壁の音に耳を澄ませてしまう人は多いはずです。
こんな人に
おすすめしたいのは。実話怪談や、事件の記録を追う話が好きな人。
映画版の題は『残穢 住んではいけない部屋』(2016年)。同じ作者の『鬼談百景』と対になっている本です。
向かないかもしれない人
派手な怪物や対決はなく、調べものと聞き取りが淡々と続きます。おすすめ度は星3で、山場で大きく盛り上がる娯楽ホラーを求める人や、家の物音が気になる人には向きにくい本です。
比べ読み
『近畿地方のある場所について』背筋
記録や資料をたどって怖さに迫る点で近い二冊です。『残穢』は語り手と手紙の主が聞き取りで土地の過去をさかのぼる構成で、筋は一本です。『近畿地方のある場所について』は雑誌記事や書き込みなど断片の資料が並び、つながりを読者が推理する作り。腰を据えて追うならこちら、考察を楽しむならあちらを。
『どこの家にも怖いものはいる』三津田信三
どちらも「家」と「記録」から怖さを立ち上げるホラーで、星の付き方も同じです。三津田信三の本は時代も書き手も異なる五つの記録を並べる形、こちらは一つのマンションの音から土地の歴史を何十年もさかのぼる調べものの形。短い単位で区切りたい日は『どこの家にも怖いものはいる』、調査を追いたい日は『残穢』を。











