あらすじ
本文には、主人公が書いている小説がそのまま挿入されます。どちらが先に起きたことなのか、読者にも次第に分からなくなる。洋館の構造も、そこに残された古い資料の描写も細かい。
読みどころ
語り手を信じてよいのかどうかを疑いながら読む種類の作品です。仕掛けの性質上、あらすじの説明はここまでにします。のちの刀城言耶シリーズの原型が、ここにある。
こんな人に
おすすめしたいのは。入れ子構造の物語が好きな人。
同じ作者の『首無の如き祟るもの』は、民俗色の強い代表作です。
向かないかもしれない人
仕掛けの性質上、筋の紹介も控えめにするしかない本で、作中作と現実の区別が曖昧なまま進みます。話の順序がはっきりしていないと落ち着かない人には、入れ子の構造が負担になります。
比べ読み
『近畿地方のある場所について』背筋
どちらも「これは本当に起きたことか」と読者を揺さぶりますが、手段が違います。『近畿地方のある場所について』は集めた資料を並べて生々しさで迫る。『忌館』は主人公が書く小説が本文に挟まり、作中作と現実の前後が曖昧になる入れ子の作りです。考察派なら背筋、語りの罠を味わうなら三津田作品を。
『日時計』シャーリイ・ジャクスン
古い屋敷を舞台にしながら、怖さの源は正反対です。『日時計』に幽霊は出ず、終末を信じた人々の小競り合いが笑いと寒気を同時に生みます。『忌館』は洋館と古い資料を細かく書き込み、小説と現実が混ざっていく怪異の話。人間の滑稽さを読みたい日はジャクスン、語り手を疑う緊張が欲しい日はこちらです。














