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家族にもやもやした日に。家族の小説5冊
姉と妹、犬のいる家、母のために働く息子、認知症の父、妻を亡くした父と息子。近すぎてうまくいかない関係を書いた五冊です。
家族のことは、他人には相談しにくいものです。嫌いではないのに素直になれない、言えばいいのに言えない。そういう日に、よその家のこじれを読むと、自分の家が少しだけ遠くから見えてきます。ここでは、きょうだいの小さなすれ違いから、親子の何十年までを、扱う時間が短い順に並べました。おすすめは五冊目です。

1『家族シアター』
できのいい姉に負い目のある妹、母の趣味を恥ずかしく思う娘、弟をうらやむ兄。一話ごとに、家族のどちらか片方の側に立って書かれた短編集です。仲直りまでは行かず、相手の見え方がほんの少し変わったところで話が閉じる。その控えめさが、かえって本当らしく感じられます。

2『さくら』
年の暮れに実家へ帰った次男の薫が、兄と妹と犬のサクラがいた子ども時代を思い出していきます。にぎやかで笑ってばかりいた家が、ある出来事を境に変わってしまう。楽しかったころの場面が明るいぶん、そのあとが重く響く。それでも、読み終えたあとにこの家族を嫌いになれない一冊です。

3『フリーター、家を買う。』
会社をすぐに辞めて実家でごろごろしていた誠治は、母が近所づきあいで心を病んでいたと知ります。家を移るお金を作るために、土木の現場で働きはじめる。自分のためには動けなかった人が、家族のためなら動けてしまう。父とのぶつかり合いも、きれいごとにせず書かれています。

4『長いお別れ』
元校長の父が認知症と分かり、母と三人の娘がそれぞれの暮らしを抱えたまま向き合っていく十年です。章が進むごとに年が変わり、父も家族の事情も少しずつ変わる。誰も上手には介護できないのに、思わず笑ってしまう場面がある。重い題材を、身構えずに読ませてくれます。

5『とんび』
妻を事故で亡くしたヤスさんは、気持ちを口にするのが下手なまま、幼い息子のアキラを育てていきます。昭和の町で、寺の住職夫婦や飲み屋の女将が、節目ごとに二人に手を貸す。父が本音を言えずに飲みこむ場面が、何度も出てくる。その飲みこんだもののほうが、読む側には残ります。
おわりに
最後の『とんび』について。ほかの四冊が家族の中のすれ違いや重荷に目を向けるのに対して、こちらはうまく言えないまま続いていく親子の三十年そのものが中心です。どれか一冊だけ手に取るなら、ヤスさんとアキラの話にしてください。図書館や書店の情報は、それぞれの本のページにあります。