あらすじ
語り手の薫は、長谷川家の次男。誰からも好かれる兄の一(ハジメ)と、周りが振り返るほど美しい妹の美貴、そして犬のサクラ。明るくにぎやかだった家族の日々が、薫の回想で少しずつ語られていきます。ある出来事を境に、その家族の形は大きく変わってしまいます。
読みどころ
子ども時代の場面が、笑えるほど生き生きしている。だからこそ後半がつらい。それでも最後まで読むと、この家族を好きなまま本を閉じられるのが西加奈子の強さだと思います。サクラの存在が物語の支えになっていて、犬と暮らしたことがある人には特に響くはずです。
こんな人に
おすすめしたいのは。実家に帰ると、なぜか子どもの頃の匂いを思い出す人。
2020年には映画にもなりました。同じ作者の『漁港の肉子ちゃん』と並べて読むと、家族の書き方の違いが見えて面白い。
向かないかもしれない人
子ども時代の明るい場面のあと、ある出来事を境に話が重くなります。家族の喪失や変化を扱う話を今は避けたい人や、軽い家族小説だけを求める人には向きにくいでしょう。
比べ読み
『そして、バトンは渡された』瀬尾まいこ
家族の形を扱う点は同じでも、明るさの配分が違う。『そして、バトンは渡された』では、どの親も娘を大事にしていたと明かされていく。こちらはにぎやかな子ども時代のあと、後半がつらくなる。気持ちが沈んでいる時は向こうを先に、笑いと痛みの落差を受け止める余力がある時にこちらを。
『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』村上春樹
過去を振り返る構成は『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』と近い。あちらは絶交の理由という謎で引っ張り、旧友との再会の会話が重い。こちらは次男の目から家族と犬のサクラとの日々をたどる。謎に導かれたいなら向こう、家族の記憶に浸りたいならこちら。














