読みもの ・
海の向こうへ行きたい日に。島の小説5冊
進路に迷う高校生、逃げるように渡ってきた少年、予言の残る島に来た三人、ものが消えていく島の小説家、最後の日々を過ごしに来た女性。島が舞台の五冊です。
島の話には、外へ出るにも船を待つしかないという決まりがついて回ります。簡単には出ていけない場所だからこそ、人の選ぶことがはっきり見える。ここでは、島そのものが筋に関わってくる小説を選びました。青春小説からホラー、静かな長編までそろえています。いちばん勧めたいのは五冊目です。

1『島はぼくらと』
瀬戸内の島で育った四人の高校生は、島に高校がないので、毎朝フェリーで本土の学校へ通っています。卒業が近づくにつれ、島に残るか出ていくかを決めなければならなくなる。移住してきた大人たちや島おこしの話も、四人の進路に絡んできます。ふるさとをきれいごとにも悪者にもしないところがいい一冊です。

2『明日の僕に風が吹く』
有人は、中学でのある出来事から教室へ戻れなくなりました。叔父が医者をしている北海道の離島へ移り、そこの高校に入ります。生徒も先生も少なく、隠しごとができない島で、診療所に運ばれてくる急な患者とも向き合うことになる。逃げてきた場所で、もう一度人の中に立てるかを、急がずに追っていく話です。

3『予言の島』
昔よく知られていた霊能者が、この島で人が死ぬと言い残していた。そんな噂のある島へ、三人の友人が軽い旅のつもりで渡ります。宿には同じ予言を知る客たちも泊まっていて、誰の話を信じればいいのか分からなくなっていく。簡単には逃げ出せないという島の決まりが、そのまま怖さになっているホラーです。

4『密やかな結晶』
この島では、鳥や写真といったものが、ある日まとめて消えます。人々は消えたものの記憶までなくし、覚えている人は秘密警察に連れていかれる。語り手は小説を書いている女性で、忘れずにいられる担当の編集者を、家の中に隠すことにします。大きな事件より、少しずつ減っていく感じがずっと怖い長編です。

5『ライオンのおやつ』
三十三歳の雫は、がんで、もう長くは生きられないと医者に言われます。向かった先は、瀬戸内に浮かぶ島のホスピス「ライオンの家」です。毎週日曜には、暮らしている人が思い出のおやつを一つ頼める決まりがある。終わりが近い話なのに、毎日のごはんや海の景色がまぶしく書かれているのがこの本です。
おわりに
最後の『ライオンのおやつ』について。ほかの四冊の島は、出ていくか、逃げてくるか、閉じこめられる場所として出てきます。この本の島だけは、自分で選んで最後に来る場所です。雫が島で何をしたいと思うのかを、ゆっくり読んでみてください。近くの図書館の所蔵や買える店は、本ごとのページで確かめられます。