あらすじ
タイトルの華氏451度は、紙が燃え始める温度。モンターグの妻ミルドレッドは、壁一面のテレビに映る「家族」と話すことに夢中で、夫の話にはほとんど耳を傾けません。ある日、本と一緒に焼かれることを選んだ女性を目にしたモンターグは、ひそかに一冊の本を持ち帰ってしまいます。
読みどころ
1953年の作品ですが、大画面のテレビやイヤホンで常に何かを聴き続ける人々の描写は、今の私たちの姿にかなり近い。本を燃やすのは政府の命令だけでなく、人々が考えることを面倒がった結果だという設定が、いちばん怖いところです。
こんな人に
おすすめしたいのは。最近、長い文章を読むのがしんどくなったと感じる人。
伊藤典夫の新訳です。本好きには、同じく本を守る話の『図書館戦争』と並べて読むのも面白い。
向かないかもしれない人
大画面のテレビやイヤホンに浸る人々の姿が今と近く、そこに怖さを覚えやすい本です。本を燃やす場面も続くので、明るい未来像のSFを求める人には息苦しく映ります。
比べ読み
『クララとお日さま』Kazuo Ishiguro
技術に囲まれた人間を、正反対の手触りで見せる二冊です。『クララとお日さま』はロボットの少しずれた語りから人の身勝手さと優しさを照らす、童話に近いやわらかな読み心地。こちらは壁一面のテレビに夢中な人々と、本を焼く消防士の話で、怖さが前に出ます。静かな日はイシグロ、警告として受け取るならブラッドベリを。
『猫のゆりかご 新装版』カート・ヴォネガット
刊行が1950年代と60年代の、古典SFの二冊です。『猫のゆりかご』は水を凍らせる物質をめぐり、世界の終わりを悲壮感抜きに運ぶ作り。『華氏451度』は考えることを面倒がった社会の怖さを、本を燃やす消防士の目から突きつけます。笑いでずらす語りが好みならヴォネガット、まっすぐな寓話ならこちらから。








