あらすじ
高校生の霧慧トァンは、カリスマ的な友人・御冷ミァハに誘われ、もう一人の友人と三人で、この世界への抵抗として自殺を試みます。そして十三年後。WHOの監察官として働くトァンの前で、世界中の数千人が同時に自殺を図る事件が起こる。トァンは、その背後にミァハの影を見ます。
読みどころ
作者が闘病しながら書き上げた長編で、「健康であれ」という圧力の描写には、切実な実感がこもっている。前作『虐殺器官』の後の世界を描いていますが、この一冊だけでも十分に読めます。文章の中にHTMLのようなタグが混ざる独特の形式にも、ちゃんと意味があります。
こんな人に
おすすめしたいのは。「正しさ」や「優しさ」がしんどく感じたことがある人。
2015年にアニメ映画化されています。『虐殺器官』と続けて読むと、二つの作品の響き合いが見えてきます。
向かないかもしれない人
少女たちの自殺の試みや、世界中で人々が一斉に自殺を図る事件が話の軸です。死を扱う話がつらい時期の人や、文中にタグが混ざる形式に抵抗がある人には、別の本が合いそうです。
比べ読み
『幼年期の終わり』Arthur C. Clarke
『幼年期の終わり』は宇宙船が地球を治め始める古典SFで、新訳で文章がすっきりしています。どちらも人類全体の行方に話が広がりますが、『ハーモニー』は健康と思いやりを強いる社会の息苦しさという身近な痛みから始まる点が違います。古典SFに初めて触れるならクラークを先に。
『星を継ぐもの〔新版〕』James P. Hogan
『星を継ぐもの』は科学者が仮説を立て反論し合う過程が推理劇になっていて、専門用語は読み飛ばしても筋を追えます。友人ミァハの影を追うトァンを通して優しさの圧力を問う『ハーモニー』は、感情の重さが前に出ます。謎解きの知的な楽しさを求める日はホーガン、息苦しさに覚えがある時はこちら。









