あらすじ
物語は、チャーリイが研究者に提出する「けいかほうこく」の形で進みます。手術のあと、たどたどしかった文章は、日を追うごとに正確に、複雑になっていく。賢くなったチャーリイは、それまで友だちだと思っていた人たちの本当の顔や、忘れていた家族の記憶と向き合うことになります。
読みどころ
賢くなることは、幸せになることなのか。チャーリイが手に入れるものと、失うものの両方が、痛いほど伝わってくる。翻訳で読んでも文体の変化がちゃんと感じられるのは、訳者の力です。最後の一文は、多くの人の記憶に残り続けています。
こんな人に
おすすめしたいのは。「頭がよくなりたい」と思ったことがある人、すべて。
中編版はヒューゴー賞、長編版はネビュラ賞を受けました。日本でも何度かドラマ化されています。
向かないかもしれない人
前半は誤字だらけのひらがなの報告が続くので、読みにくさに慣れるまで時間がかかります。友人や家族の冷たい本心に向き合う場面もあり、裏切られた経験が生々しい時期にはこたえます。
比べ読み
『紙の動物園』ケン・リュウ
星の並びが同じで、どちらも大きな賞を受けた、人の心に寄ったSFです。『紙の動物園』は母が折った紙の虎が動き出す表題作を含む短編集で、母と子の距離が主題。こちらは手術で知能を得た青年の経過報告が一冊を通して続く形です。一話ずつ区切って読みたいならケン・リュウ、文体の変化を通しで追いたいならキイスを。
『渚にて 人類最後の日』ネヴィル・シュート
『渚にて』は核戦争で北半球が滅び、汚染が届くまでの数か月を人々が普通に暮らす話です。こちらは知能が上がっていく青年が、周りの人の本当の顔や家族の記憶と向き合う話。社会全体の終わりを見つめるならシュート、一人の内側の変化を見つめるならキイスを。星はどちらも同じ並びです。








