あらすじ
中国の科学者・葉文潔は、文化大革命の吊し上げで父を殺されます。人類に絶望した彼女が軍の極秘施設から宇宙へ向けて発した電波は、四光年先の「三体星」に届いてしまう。そこは三つの太陽が不規則に巡り、文明が何度も焼き尽くされてきた世界だった——。現代パートでは、科学者の連続自殺と、参加者の脳に直接届く奇妙なVRゲームを追いかけることになります。
読みどころ
物理の本だと身構えなくて大丈夫です。三体問題も宇宙物理も出てきますが、理解しなくても物語は進みます。握っておくべき糸は一本だけ、人類を信じられなくなった人間が、何を選ぶか。そこだけ持っていれば最後まで走れます。文化大革命の描写から始まるSFという構えがそもそも異様で、この作品が中国SFを世界文学の位置まで押し上げた理由もそこにあります。
こんな人に
おすすめしたいのは。長い物語に何日か潜っていたい、秋の夜に。
三部作ですが、一巻だけでも完結感があります。面白かったら『三体Ⅱ 黒暗森林』へ。評価はむしろ二巻のほうが高いくらいです。
向かないかもしれない人
読みやすさは星3の厚い本で、文化大革命の吊し上げで父が殺される場面から始まります。歴史の暴力を読むのがつらい時期の人や、物理の話題が出るだけで身構えてしまう人には重めの入口です。
比べ読み
『海底二万里』ジュール・ヴェルヌ
星の並びはまったく同じ二冊ですが、向いている先が逆です。『海底二万里』は潜水艦に乗せられた博物学者が海の底を見て回る十か月、『三体』は宇宙へ放たれた信号と、それに応える異星の世界。古典の冒険から入りたい人はヴェルヌを先に、人類そのものへの問いを抱えたいなら劉慈欣を。
『復活の日』小松左京
人類規模の危機を扱う点で並べやすい組み合わせです。『復活の日』は細菌兵器で人類がほぼ絶え、南極に残った一万人足らずが舞台。『三体』は文化大革命の傷から始まり、危機の種を蒔くのが人間自身という構えです。日本の古典SFの重さを知りたいなら小松作品、歴史とSFの組み合わせの異様さに触れたいならこちら。










