あらすじ
クラヴィスの任務は、戦争犯罪者を消すこと。痛みを感じないよう脳を調整され、感情を抑えて引き金を引きます。けれど標的のリストに何度も現れる「ジョン・ポール」だけは、いつも寸前で姿を消している。追跡の舞台はプラハ、そしてアフリカやインドへ。任務の合間に、クラヴィスは亡くなった母親のことを繰り返し思い出します。
読みどころ
SFとしてのアイデアと、戦争小説としての緊張感が両立しています。淡々とした一人称の語りが、描かれる暴力の重さをかえって際立たせる。専門用語は多いですが、分からなくても筋は追えるので、気にせず進んでください。作者は本作を含めわずかな長編を残して、2009年に亡くなりました。
こんな人に
おすすめしたいのは。テクノロジーと戦争の未来を、本気で考えさせるSFを読みたい人。
同じ作者の『ハーモニー』は、本作とつながる世界を描いた長編です。
向かないかもしれない人
虐殺や暗殺を扱い、暴力の重さが前に出る。専門用語も多く読みやすさは星3つなので、戦争の場面がつらい人や、用語の多い文章で止まりがちな人は、気持ちに余裕がある時期に。
比べ読み
『ヨハネスブルグの天使たち』宮内悠介
現実の暴力をSFの装置で見つめる点で、二冊は同じ方向を向いています。『ヨハネスブルグの天使たち』は紛争地で落下実験に使われるロボットを軸にした硬質な作品で、簡単な救いは示されない。虐殺器官は追跡劇の緊張感が筋を引っぱる。推進力を求めるなら本作を先に、静かな重さを受け止めたいときにヨハネスブルグを。
『星を継ぐもの〔新版〕』James P. Hogan
星の並びは同じで、どちらも専門用語を読み飛ばしても筋は追えると紹介されている。『星を継ぐもの』は科学者たちが証拠と仮説で謎を解いていく推理劇。虐殺器官は暗殺任務を負う兵士の一人称で、暴力の重さが際立ちます。知的な謎解きに浸りたい日は星を継ぐもの、戦争の未来を考えたい日は本作。









