あらすじ
理科の実験の班分けで余った二人。初実は、にな川の部屋に呼ばれ、彼がオリチャンというモデルを追いかけていることを知ります。オリチャンの記事を切り抜き、ラジオを聴き込むにな川の背中を見ているうちに、初実のなかにある衝動が生まれる。二人の関係は、恋愛とも友情とも違う形のまま進んでいきます。
読みどころ
教室の空気の描き方が鋭くて、休み時間の居場所のなさを、ここまで正確に言葉にした小説は少ない。書き出しの一文から、初実のひねくれた目線に引き込まれる。短いので、学生時代の居心地の悪さを思い出したいときに一晩で読めます。
こんな人に
おすすめしたいのは。休み時間に、どこにいればいいか分からなかった記憶がある人。
文庫で薄い一冊です。同じ芥川賞作品の『コンビニ人間』『推し、燃ゆ』とも読み比べてみてください。
向かないかもしれない人
物語性は星3つで、大きな事件は起きない。初実のひねくれた目線で進むので、素直な主人公に感情移入して読みたい人や、恋愛としての決着を求める人には合いにくい。
比べ読み
『推し、燃ゆ』宇佐見りん
星の並びはまったく同じで、どちらも短い芥川賞作。『推し、燃ゆ』は推しを支えにどうにか立っている人の切実さを、密度の高い文章で差し出す。蹴りたい背中は、モデルを追うにな川を外から見る初実の目線で進みます。推す側の内側に入りたいなら推し、燃ゆ、推す人を横から見る距離感を味わうなら本作。
『コンビニ人間』村田沙耶香
『コンビニ人間』は読みやすさが星5つで、まわりが押しつける「普通」の圧を淡々とした語りで浮かび上がらせる。蹴りたい背中は教室で余った二人の、恋愛とも友情とも違う関係を追います。大人の職場での居場所を考えたいならコンビニ人間、学生時代の居心地の悪さに戻るなら本作が先。











