あらすじ
なぜ虫になったのかは、最後まで説明されません。部屋から出られなくなったグレゴールを、父は嫌い、母は怖がり、妹のグレーテだけが食事を運んで世話をします。稼ぎ手を失った家族は、それぞれ働きに出るようになり、グレゴールを見る目もだんだん冷えていく。
読みどころ
不条理文学と呼ばれますが、読んでみると話はとても分かりやすい。働けなくなった人を家族がどう扱うかという物語として読むと、今の介護や病気の話にそのまま重なって見えます。一時間ほどで読める短さなので、名作を一冊読んだという手応えも気軽に得られます。
こんな人に
おすすめしたいのは。「世界の名作」を、短いものから読んでみたい人。
薄い文庫なので、鞄に入れておいて待ち時間に読むのに向いています。
向かないかもしれない人
虫になった理由は説明されないまま進むので、謎が解かれる話を期待すると戸惑います。働けなくなった人を家族が持て余す筋は、介護や病気の最中にいる人には近すぎて、つらいかもしれません。
比べ読み
『老人と海』Ernest Hemingway
どちらも短く、古典の入口に向く作品です。『老人と海』は八十四日間釣れなかった老漁師がひとりで沖へ出る話で、外の自然と向き合う力強さが軸。『変身』は虫になった男が部屋に閉じこもり、家族の目が冷えていく内向きの話です。挑む姿を読みたいならヘミングウェイ、身近な家族の問題に重ねて読むならカフカを。
『むらさきのスカートの女』今村夏子
星は同じ並びで、平易な文のまま不安が続く点も共通です。『むらさきのスカートの女』は語り手が近所の女性を異様な近さから見つめる話で、可笑しさと不気味さが同居。『変身』は説明のない変身と、それに対する家族の反応を追います。現代日本のずれた日常を味わうなら今村作品、百年読まれてきた不条理の原型ならこちら。








