あらすじ
徳永は、若手漫才コンビ「スパークス」のボケ担当。熱海の花火大会の余興で、同じく無名のコンビ「あほんだら」の神谷と知り合います。常識からはみ出していて、なのに笑いに対してだけは異常なほど純粋な神谷。徳永はその場で弟子にしてほしいと頼み込み、二人の十年が始まります。
読みどころ
書いたのが現役の芸人なので、笑いを作る側の苦しさと誇りが、外からでは書けない解像度で出てきます。神谷は人を惹きつける一方でどこか危うく、徳永の彼を見る目が年月とともに変わっていく。その変化を追っていくのが、この小説を読む楽しみです。
こんな人に
おすすめしたいのは。何かに本気で打ち込んだことがある人。
薄い文庫で、通勤の行き帰りでも読み切れます。同じ作者の『劇場』は、恋愛を描いた長編です。
向かないかもしれない人
派手な事件はなく、二人の芸人の関係の移り変わりが中心です。神谷の危うさを見守る話なので、大きな展開や、笑いの多い芸人小説を期待して開く人には地味に映りそうです。
比べ読み
『潮騒』三島由紀夫
星の付き方は同じで、どちらも短めの文学作品です。『潮騒』は島の若い漁師と海女の恋を明るい筆で追い、『火花』は売れない芸人が先輩に惹かれ、その見え方が年ごとに揺れていく十年を書きます。晴れた気分で読みたい日は三島作品、何かに打ち込む人の危うさに向き合いたい日はこちら。
『月と六ペンス』W. Somerset Maugham
常識からはみ出した人物を、そばにいる人間が見つめる構図は共通しています。『月と六ペンス』は株式仲買人が妻子を置いて絵へ向かう話で、読み返す価値の星は満点。『火花』は笑いに純粋すぎる先輩を後輩芸人の目で追います。芸術家の生き方を古典で考えるならモームから、いまの日本の芸の世界なら又吉作品から。








