あらすじ
古倉恵子は36歳。大学1年で始めたコンビニのアルバイトを、18年続けています。マニュアルと店内の音に身を預けているあいだは、世界の歯車としてきちんと回れる。ところが周りは「結婚は?」「就職は?」と、決まった形の人生を求めてくる。そこへ婚活目当てでバイトに入ってきた白羽という男が現れて、恵子の毎日が軋み始めます。
読みどころ
恵子の語りが淡々としているせいで、周囲の「普通であれ」という圧のほうが、かえって異様に見えてくる。どっちがおかしいのか、読むほどに判断がつかなくなるのがこの本の怖さであり、面白さでもあります。笑える場面は多い。なのに閉じたあと、妙な居心地の悪さが残ります。
こんな人に
おすすめしたいのは。「普通」を求められることに、少し疲れている人。
文庫で薄く、一晩で読み切れる分量です。芥川賞作品を初めて読むなら、入口としてちょうどいいと思います。
向かないかもしれない人
筋の起伏は控えめで、物語性の星は3つ。主人公が成長して報われる話や、居心地の悪さが残らない話を求める人には合わない場合があります。
比べ読み
『むらさきのスカートの女』今村夏子
芥川賞作で、笑える場面と居心地の悪さが同居する点はよく似ています。『コンビニ人間』は語り手自身が周りの「普通」から浮き、『むらさきのスカートの女』は語り手が他人を観察し続けるうちに足元が傾いていく。社会の圧を考えたいならこちら、語りの不穏さを味わいたいならあちらを先に。
『変身』Franz Kafka
どちらも、周りと同じに働けない人を家族や社会がどう扱うかが見えてくる話です。『変身』は百年以上前の作品で、一時間ほどで読める短さ。こちらは現代の日本のコンビニが舞台なので、身近な場面から入りたいならコンビニ人間を先に、古典に触れておきたい気分なら変身からどうぞ。









