あらすじ
あかりは高校生。学校の勉強もアルバイトも思うようにいかない彼女が、どうにか毎日を回していられるのは、アイドルグループのメンバー・上野真幸を「推して」いるから。ブログを更新し、発言を書き留め、推しという人間を解釈し続ける。ある朝、その推しがファンを殴ったというニュースが流れます。
読みどころ
推し活を「痛いもの」とも「尊いもの」とも決めつけず、推すことでようやく立っていられる人の切実さだけを差し出してくる。文章の密度が高く、短い作品なのに息が詰まるほどです。推しがいる人には刺さりすぎるかもしれないし、いない人は世界の見え方がひとつ増えると思います。
こんな人に
おすすめしたいのは。何かを「推す」ことで毎日を支えている人。
文庫で薄めの一冊。デビュー作の『かか』も、言葉の熱で押し切っていく同じ手触りの作品です。
向かないかもしれない人
短いぶん文章が詰まっていて、息苦しさを覚える箇所があります。推しを支えにしている自覚が強い人には近すぎて痛く、はっきりした筋の起伏を求める人には動きが少なく見えます。
比べ読み
『蹴りたい背中』綿矢りさ
星の並びがそろった、芥川賞を受けた高校生の話どうしです。『蹴りたい背中』はクラスで余った男女の距離を追い、『推し、燃ゆ』は画面の向こうの一人を解釈し続ける少女の内側に潜ります。教室の居心地の悪さを読みたいなら綿矢作品から、何かに寄りかかって立つ切実さを読みたいならこちらを。
『火花』又吉直樹
どちらも誰かに入れ込む人の話ですが、『火花』の徳永は先輩芸人のそばで十年を過ごし、相手と言葉を交わします。あかりの推しは遠い存在で、届くのは一方通行の記録だけ。人と人のぶつかり合いを見たい日は又吉作品を、ひとりの頭の中の密度に浸りたい日は宇佐見作品を選ぶと外れにくいです。










