あらすじ
『山月記』は、中国の古い伝奇を下敷きにした短い作品です。虎になった李徴は、草むらの陰から袁傪に語りかけ、なぜこうなったのかを打ち明けます。『李陵』は、漢の武将・李陵が匈奴との戦いに敗れて捕らわれる話を軸に、李陵を弁護して罰を受けた司馬遷、匈奴に屈しない蘇武の三人の生き方を描いた中編です。
読みどころ
漢文調の硬い文章ですが、声に出したくなるほどリズムがよく、短いのに一語も無駄がない。『山月記』は十分ほどで読めるので、まずそれだけでも。高校のときに読んだきりの人は、今読むと李徴の言い訳のひとつひとつが自分のことのように聞こえるかもしれません。
こんな人に
おすすめしたいのは。「才能がない」と言い訳して、何かを始めずにいる人。
『山月記』は青空文庫でも読めますが、『李陵』とあわせて手元に置くならこの文庫が手頃です。
向かないかもしれない人
漢文調の硬い文章で、読みやすさは星3です。現代の口語に近い文体でないと進みにくい人や、中国の歴史上の人物になじみがない人には『李陵』が重く感じられるでしょう。
比べ読み
『変身』Franz Kafka
人が人でないものになる話として、二冊は並べて読めます。『変身』は虫になった男を家族がどう扱うかが中心で、読みやすさは星4です。『山月記』は虎になった李徴が自分のことを打ち明ける話で、漢文調の硬い文体です。文体の壁を避けたいならカフカから、声に出せるリズムを味わいたいなら中島作品を。
『沈黙』遠藤周作
信念と弱さの間で揺れる人物を描く点で通じています。『沈黙』は禁教下の日本に潜入した司祭の話で、重い問いを最後まで突きつけます。『李陵・山月記』は短い『山月記』と、三人の生き方を対比する中編『李陵』の組み合わせ。まず短い一編で試したい人は中島作品から、腰を据えるなら遠藤作品を。








