あらすじ
溝口の語りで、少年時代から放火に至るまでが語られます。明るく屈託のない友人・鶴川、足に障害を抱え、それを武器にして女性を口説く皮肉屋の柏木。二人との関わりのなかで、溝口の中の金閣は、手の届かない美の象徴から、自分と世界のあいだに立ちはだかるものへと変わっていきます。
読みどころ
文章は硬く、比喩も多いので、すらすらとは読めません。それでも一文ごとの密度と美しさは、他の小説ではまず味わえない。柏木の台詞は毒がありますが、妙に説得力があって忘れられません。一度で分からなくても、何年か後に読み返すと別の箇所が光ります。
こんな人に
おすすめしたいのは。一度は三島由紀夫の代表作に挑んでみたい人。
三島由紀夫を初めて読むなら、まず短い『潮騒』から入るのも一つの手です。
向かないかもしれない人
文章が硬く比喩も多いため、読みやすさの星は2つ。筋の運びを楽に追いたい人や、放火に至る暗い内面の語りに長く付き合う気分でない人には重い。
比べ読み
『異邦人』Albert Camus
どちらも社会から外れた若者の内面を一人称で追う。『異邦人』は薄く平易な文章で、本作は硬い文と比喩が続き、読みやすさの星が一つ低い。名作の重さを手早く確かめたいなら異邦人を先に、一文ずつの密度に浸る時間がある時は本作に挑むとよい。
『李陵・山月記』中島敦
漢文調の硬い文章という点で通じる。『山月記』は十分ほどで読めて音読向きのリズムを持ち、本作は長い一人称で美への執着を積み上げていく。硬い文体への慣らしとして山月記を先に、手応えのある長さに向き合える時は本作へ。









