あらすじ
章のタイトルは、すべてその時代のヒット曲の名前。ポケベルもスマホもない時代、固定電話と手紙と車でのデートで、二人の恋が進んでいきます。後半、就職して東京で働くことになった鈴木は、静岡に残ったマユと遠距離恋愛を続けますが、職場で出会った女性に心が揺れ始めます。
読みどころ
ここに書いたあらすじだけ読むと、普通の恋愛小説です。それがこの本の一番大事な仕掛けなので、これ以上は言えません。当時の流行や小物の描写がやけに細かいのにも、ちゃんと意味があります。
こんな人に
おすすめしたいのは。恋愛小説のふりをしたミステリに、だまされてみたい人。
2015年に映画化されています。原作を先に読むことを強くすすめます。
向かないかもしれない人
前半は時代の流行を織り込んだ普通の恋愛の話として進むため、早く事件が起きてほしい人には退屈に映ります。固定電話や手紙の時代になじみがないと、細部が入りにくい面もあります。
比べ読み
『新参者』東野圭吾
星の並びが同じでも、仕掛けの置き場所が違います。『新参者』は刑事が商店街を歩き、人の小さな秘密をほどく正統な捜査もの。『イニシエーション・ラブ』は恋愛小説の姿をしており、あらすじ以上を知らずに開くことに意味がある作品です。人情の謎解きなら東野作品、だまされる体験を求めるなら乾作品を。
『氷菓』米澤穂信
『氷菓』は高校生が古い文集の謎を追う学園ものです。こちらは八十年代後半の静岡で進む恋が表の顔で、時代の小物の細かさにも意味があります。青春の謎解きを素直に楽しむなら米澤作品、恋愛ものの形をした仕掛けに挑むならこちら。どちらも分量は軽めです。








