あらすじ
弁当屋で働く花岡靖子は、しつこく押しかけてくる元夫を、娘と一緒に殺してしまいます。そこへ隣室に住む高校の数学教師・石神哲哉が訪ねてきて、後のことは自分に任せるように言う。捜査にあたる刑事の草薙は、大学時代の友人である物理学者・湯川学に相談し、湯川は石神がかつての同級生だと気づきます。
読みどころ
犯行の場面から始まる形式なのに、石神がどうやって事件を隠したのかが最後まで見えてこない。天才同士の読み合いにひりつくような緊張感があり、そしてタイトルの「献身」の意味がわかった瞬間、話の重さがまるで別物になります。
こんな人に
おすすめしたいのは。謎解きと人間ドラマの両方を味わいたい人。
「ガリレオ」シリーズの一作ですが、これ単独で読んでも問題ありません。2008年に映画化されています。
向かないかもしれない人
冒頭から殺人の場面があり、題名の献身の意味が見えてくると話の重さが一変する作りです。軽い謎解きで気分転換したい日や、罪を犯した側の事情に深入りしたくない人には重く残ります。
比べ読み
『カラスの親指』道尾秀介
星はすべてそろっています。『カラスの親指』は身を寄せ合う詐欺師たちが大きな勝負を仕掛ける厚めの作品で、だます側の連帯が楽しめます。こちらは隣人のために数学教師が罪を隠し、物理学者がそれを崩しにかかる読み合いが中心。仲間ものの温度が好きなら道尾作品、二人の天才の対決を見たいなら東野作品を。
『往復書簡』湊かなえ
『往復書簡』は書簡の往来だけで昔の事故の真相が塗り替わる構成で、語りの形が仕掛けを兼ねます。こちらは犯行を最初に見せたうえで、隠し方が見えないまま進む倒叙の形。文面の裏を読む遊びなら湊作品、論理の詰め合いならガリレオの一作を先に。













