あらすじ
1980年代、食品会社を標的にした脅迫事件が日本中を騒がせ、犯人は捕まらないまま時効を迎えました。京都で紳士服の仕立て屋を営む曽根俊也は、父の遺品を整理していて手帳とカセットテープを見つけます。テープから流れてきたのは、事件で使われた脅迫の声。それは幼いころの俊也自身の声でした。同じころ、新聞記者の阿久津英士も、この事件の取材を命じられます。
読みどころ
未解決事件を題材にしながら、光が当たるのは事件に巻き込まれた子どもたちの、その後の人生です。俊也と阿久津、二つの側から真相へ近づいていく構成で、地道な取材の積み重ねが、ぼやけていた事件の輪郭をはっきりさせていきます。
こんな人に
おすすめしたいのは。事件そのものより、その周りにいた人間に興味がある人。
2020年に映画化されています。文庫でも厚みがあるので、週末にまとめて読むのが向いています。
向かないかもしれない人
読みやすさは星3で、文庫でも厚めです。取材を重ねて事実を固めていく進み方なので、名探偵の推理や速い展開を期待する人には、中盤が地道に感じられるかもしれません。
比べ読み
『理由』宮部みゆき
事件を関わった人々の側から掘り起こす点で近い二作です。『理由』は高層マンションの四人殺しを扱い、住民票と実際の暮らしのずれが入口。『罪の声』は脅迫に使われた子どもの声から、巻き込まれた子らのその後をたどります。世の中の仕組みを見たいなら宮部作品、取材で真相に近づく過程を追うならこちら。
『占星術殺人事件 改訂完全版』島田荘司
星の並びは同じでも、方向は大きく違います。『占星術殺人事件』は昭和十一年の奇怪な手記と遺体の謎に占星術師が挑む本格もので、仕掛けを解く楽しみが中心。『罪の声』は脅迫事件の背後にいた人間を、仕立て屋と新聞記者の二方向から追います。謎解きの快感を求めるなら島田作品、事件の重みを受け止めたいなら塩田作品。








