あらすじ
宮城県警の刑事・笘篠は、自身も震災で家族を失った男です。善人としか言いようのない被害者が、なぜこれほどむごい殺され方をしたのか。捜査の途中で、刑務所を出たばかりのある男が浮かび上がります。笘篠が掘り下げていくのは、被害者たちが働いていた福祉の現場と、そこで支援を受けられなかった人々の記憶です。
読みどころ
犯人探しの面白さはもちろんあるのですが、読み終えて頭に残るのは謎解きより制度の話です。申請をためらう人、窓口で断られる人、断る側の事情。どれにも一理あるように書かれているから、簡単に誰かを責めて終われない。重いテーマですが、文章は平易で、先へ先へと読ませます。
こんな人に
おすすめしたいのは。ニュースで見る社会問題を、人の顔が見える形で考えたい人。
2021年に佐藤健、阿部寛の出演で映画になりました。表紙もその映画版の写真です。
向かないかもしれない人
被害者が縛られたまま餓死させられるという、むごい事件が発端。再読性は星3つで、謎解きの爽快さより重い問いが残るため、軽い娯楽ミステリを探している人には合わない。
比べ読み
『火車』宮部みゆき
どちらも制度のすき間に落ちた人を謎の中心に置く社会派。『火車』はカードローンと多重債務、本作は震災後の仙台の福祉の窓口が舞台です。火車はおすすめ度が星4つと一段高い。お金の失敗の怖さを知りたいなら火車、支援する側とされる側の両方の事情を見たいなら本作から入るといい。
『贖罪』湊かなえ
『贖罪』は殺人の現場にいた四人の少女が壊れていく過程を追い、救いは多くないと紹介されている。護られなかった者たちへは重い題材ながら文章が平易で、実用度も星2つと社会を知る手がかりがあります。人の内側の崩れを読みたいなら贖罪、社会の仕組みに目を向けたいなら本作を先に。










