あらすじ
語り手は章ごとに替わり、同じ会話が別の受け取られ方をしていることが分かります。誰も明確な悪意を持っていないのに、疑いと比較が積み重なっていく。子どもたちの様子も並行して描かれます。
読みどころ
加害の自覚がないまま追い詰め合う過程を、丁寧に書いた作品です。実際の事件から着想を得ていますが、事件そのものの再現ではありません。
こんな人に
おすすめしたいのは。人間関係の緊張を描いた小説が読みたい人。
同じ作者の『対岸の彼女』も女性同士の関係を扱っています。
向かないかもしれない人
五人の母親の関係が壊れていく過程を丁寧に追う話で、救いのある展開や爽快な解決を求める人にはつらいかもしれない。子育てや受験の人間関係に疲れている時期にも負担が大きい。
比べ読み
『悪人』吉田修一
どちらも視点を替えて出来事の見え方を揺さぶる。「悪人」は峠で見つかった遺体をめぐって悪人とは誰かを問う長編で、九州の地名や方言が生々しい。「森に眠る魚」は子どもの受験をめぐる五人の母親が、悪意なく追い詰め合う過程を章ごとの語りで追う話。事件の重さを読みたいなら「悪人」、身近な関係の緊張ならこちら。
『正欲』朝井リョウ
「正欲」は多様性という言葉が届かない人たちを扱い、読む側の思い込みを揺さぶる。「森に眠る魚」は比較と疑いが積み重なり、はっきりした悪意がないまま関係が壊れていく。社会の見方を問い直したい時は「正欲」、母親たちの日常の緊張をじっくり追いたい時はこちら。星の並びは同じで、重さも近い。









