あらすじ
52ヘルツのクジラは、ほかのクジラには聞こえない高い周波数で鳴くため、仲間に声が届かないと言われています。三島貴瑚は家族との関係に深く傷ついた過去を持ち、東京を離れて海辺の町に移り住みました。そこで出会ったのが、母親から「ムシ」と呼ばれ、ひどい扱いを受けている少年でした。
読みどころ
虐待やネグレクトといった重い題材を扱いながら、誰かの声を聴こうとすること自体が救いになるという希望が全体を支えています。貴瑚の過去と現在が交互に明かされる組み立てで、彼女がなぜこの町に来たのかが、話の進みとともに見えてくる。
こんな人に
おすすめしたいのは。誰にも分かってもらえないと感じたことがある人。
2024年に映画化されました。つらい場面もあるので、気持ちに余裕のある日に読んでください。
向かないかもしれない人
虐待やネグレクトの場面がはっきり出てきます。家族との関係で傷ついた記憶が生々しい時期の人や、つらい描写を避けて穏やかに過ごしたい日には、間をおいてから開くほうが楽です。
比べ読み
『流浪の月』凪良ゆう
同じ星の付き方で、本屋大賞を一年違いで受けた二作です。『流浪の月』は世間が誘拐と呼んだ二か月を当事者の側から書き、周りの決めつけとの距離が主題。こちらは届かない声を聴こうとする人の話で、救いの方向がより前に出ています。希望の手ざわりを求めるなら町田作品を先に、割り切れなさに浸るなら凪良作品を。
『八日目の蝉』角田光代
子どもを守ろうとする大人が軸にある点で並べられます。『八日目の蝉』は赤ん坊を連れ去った女の逃亡の四年と、その子のその後を追う長編。こちらは傷を負った女性が海辺の町で虐げられた少年と出会う話で、過去と現在が交互に明かされます。逃げる側の緊張を読みたいなら角田作品、聴く側の回復を読みたいならこちら。









