棚の前で/人生の部/正欲

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棚の前で

『正欲』新潮文庫の書影書影:版元ドットコム

正欲

  • 人生
  • 新潮文庫
  • 分量:ふつう

「多様性」という言葉が届かない場所にいる人たちの話。第34回柴田錬三郎賞受賞作。

おすすめ度
★★★★★
読みやすさ
★★★★★
物語性
★★★★★
実用度
★★★★★
再読性
★★★★★

おすすめ度は、棚の前でが「まず一冊」としてどのくらい強く勧めるかを示す数字です。物語性・再読性・読みやすさと分量から決めています。

版元
新潮社
判型
新潮文庫
刊行
2023年6月
ISBN
9784101269337

あらすじ

無関係に見える人たちの暮らしが、章を追うごとに近づいていきます。そのうちの何人かは、世間の言う「多様性」にさえ含まれない、ある指向を抱えている。彼らは、それを誰にも知られないよう、細心の注意を払って日々を過ごしています。冒頭には、ある事件の報道が置かれています。

読みどころ

「自分は偏見がないほうだ」と思っている人ほど、読みながら何度も足元を揺さぶられるはずです。問いは重いですが、話の進め方はミステリのように引っ張る力があり、止めどころがなくなります。読後に誰かと話したくなる本です。

こんな人に

おすすめしたいのは。「多様性」という言葉に、どこか引っかかりを覚えている人。

稲垣吾郎、新垣結衣が出演した映画版(2023年)もあります。同じ作者の『何者』と続けて読むと、問いの深まり方がよく分かります。

向かないかもしれない人

重い問いを抱えたまま本を閉じるのがつらい人には不向きだろう。自分の偏見のなさを揺さぶられる作りで、気楽な娯楽を求める日には向かない。

比べ読み

『流浪の月』凪良ゆう

世間が貼るラベルと当事者の実感のずれを扱う点で近い二冊。『流浪の月』は誘拐事件と呼ばれた二人の関係を、静かな時間の描写で包むように書く。『正欲』は無関係に見える人たちの章が近づく組み立てで、ミステリのように引っ張る。重さを静けさで受けたいなら『流浪の月』、問いを突きつけられたいなら『正欲』を先に。

『ある男』平野啓一郎

『ある男』は、亡夫の正体が別人だったという謎を入口に、人は過去を捨てて生き直せるのかと問いかける。『正欲』は誰にも知られないよう暮らす人たちの指向を軸に、多様性という言葉の届く範囲を問う。どちらも謎で読ませるが、語りの優しさは『ある男』、揺さぶりの強さは『正欲』。穏やかに入るなら『ある男』から。

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