あらすじ
小夜子が任されたのは、葵の会社が新しく始めたハウスクリーニングの仕事。慣れない肉体労働のなかで、奔放に見える葵との距離も、少しずつ縮まっていく。物語はもう一つ、葵の高校時代を並行して描きます。いじめを避けて転校した先で出会った、ナナコという少女との夏。二つの時間は交互に進み、やがて一本につながる。
もう少し詳しく(結末には触れません)
葵の会社はもともと旅行の仕事をしていて、新しく掃除代行を始めたところでした。小夜子はそのパートとして雇われ、慣れない家の掃除に通う日々が始まります。高校時代の葵は、前の学校でのいじめを経て転校しており、その先でナナコと出会う。2005年に第132回直木賞を受け、2006年にはWOWOWでドラマになりました。小夜子を夏川結衣さん、葵を財前直見さんが演じています。
主な登場人物
- 小夜子
- 三十代の専業主婦。三歳の娘あかりの母で、近所の公園になじめずにいる。
- 楢橋葵
- 小夜子と同い年で独身の社長。会社の名前はプラチナ・プラネット。
- ナナコ(野口魚子)
- 葵が高校時代に転校先で出会った同級生。
読みどころ
高校時代のパートがとにかく切ない。十代の友情のまぶしさと危うさが、大人になった葵の姿に重なって見えてくるので、現在のパートの何気ない会話まで違って聞こえます。女性同士の関係を書いた本ですが、職場や家庭で「向こう岸」の人と線を引いた覚えのある人なら、きっと思い当たる節がある。
こんな人に
おすすめしたいのは。大人になって、友だちの作り方を忘れてしまった人。
同じ作者の『八日目の蟬』よりも日常に近い話です。重すぎない角田光代を読みたいならこちら。
向かないかもしれない人
大きな事件や謎解きで引っ張る話ではなく、日常の会話と過去の回想で進みます。速い展開を求める人や、高校時代のいじめの話がつらい人は注意が要ります。
比べ読み
『i(アイ)』西加奈子
女性同士の友情を軸にする点で近いのが『i(アイ)』です。あちらは恵まれていることへの罪悪感を抱えた少女とミナの関係を正面から書き、こちらは大人の現在と高校時代の二つの時間を交互に進めます。十代の友情そのものに浸りたいなら『i(アイ)』、大人になってからの距離感を考えたいならこちらへ。
『舟を編む』三浦しをん
『舟を編む』は辞書作りの細部を追う職業ものの話で、読みやすさは星5とこちらより一つ高めです。どちらも仕事の場で人との向き合い方が変わっていきますが、言葉と仕事の面白さで軽く読みたいなら『舟を編む』、友情の切なさまで受け止めたい日は『対岸の彼女』を。










