あらすじ
舞台は出版社・玄武書房の辞書編集部。定年を控えたベテラン編集者の荒木は、自分の後を任せられる人間を探していました。目をつけたのは、営業部で浮いていた青年・馬締光也。言葉に対して異様なほど真剣な馬締は、国語辞典『大渡海』の編纂に加わることになります。
読みどころ
「右」という言葉をどう説明するか、用例をどこから集めるか。ふだん目にすることのない辞書作りの細部が、いちいち面白い。一語一語に向き合う姿勢が、そのまま人との向き合い方になっていくのがこの小説の良さで、出てくる人がみんな少し不器用なのも温かい。
こんな人に
おすすめしたいのは。自分の仕事の意味を、ふと考えてしまう人。
2013年に映画にもなりました。言葉が好きな人は、本を閉じたら手元の辞書を開いてみてください。
向かないかもしれない人
辞書作りの細部が読みどころなので、起伏の大きい展開や事件を待つ人には進みが穏やかに映ります。不器用な人たちのやりとりが続くため、テンポの速い会話劇を好む人にも向きません。
比べ読み
『神様のカルテ』夏川草介
星がすべて同じで、どちらも一つの仕事に打ち込む人を描きます。『神様のカルテ』は信州の病院の内科医が主人公で、激務と終末期の医療が背景にあり、重さは一段上です。『舟を編む』は辞書編集部で用例を集める地道な作業が中心。気軽に職業ものを楽しみたいなら三浦作品から、命の現場に向き合う余力があれば夏川作品へ。
『食堂かたつむり』小川糸
『食堂かたつむり』は声を失った女性が故郷で一日一組の食堂を開く話で、分量は軽め。言葉に取りつかれた人々が辞書を作るこちらとは、声を出せない側と言葉を探し続ける側という対比になります。短い時間で温まりたい夜は小川作品、じっくり職人の仕事を追いたい週末は三浦作品が合います。













