あらすじ
ヘールシャムでは、生徒たちは絵や詩を作ることを強く勧められ、優れた作品は「展示館」に選ばれる。外の世界からはほとんど切り離され、先生たちは何かを言いよどむ。キャシーの回想は、三人の友情と恋のもつれを中心に進み、やがて彼らがどんな未来を約束されているのかが、見えてくる。
読みどころ
設定を明かしてしまうと台無しになる本なので、何も調べずに読み始めることをすすめます。静かで抑えた語りなのに、胸の奥をずっと掴まれているような読書になる。作者のカズオ・イシグロは、2017年にノーベル文学賞を受けた作家です。
こんな人に
おすすめしたいのは。静かな文章で、深く心を動かされたい人。
2010年にイギリスで映画化、2016年には日本でもドラマ化されました。
向かないかもしれない人
読みやすさは星3で、静かな回想がゆっくり進みます。設定が早くに示される構成ではないので、先の見える筋立てを好む人や、気持ちが沈んでいる時期の人には重さが長く続くかもしれません。
比べ読み
『沈黙』遠藤周作
星が同じで、どちらも抑えた語りで重い問いを差し出します。『沈黙』は禁制下の日本に潜入した司祭が、拷問される信徒を前に黙る神と向き合う話で、苦しみが正面から来ます。こちらは介護人の女性による寄宿学校の回想で、痛みは遠回りにやってきます。信仰を問うなら遠藤作品、静かな語りに入るならイシグロ作品を。
『砂の女』安部公房
『砂の女』は砂の穴の底の家から出られなくなる男の話で、閉じ込められた状況への抵抗が軸にあります。こちらは外の世界からほぼ切り離された学校で育った若者たちの友情と恋を、回想で追う作品。どちらも普通ではない場所での生を扱いますが、息苦しい寓話を味わうなら安部作品、記憶のやわらかい語りに沈むならこちら。









