あらすじ
橘は子どものころにチェロを習っていましたが、ある出来事をきっかけにやめていました。潜入先で担当になったのは、若い講師の浅葉。レッスンを重ねるうちに、橘は再びチェロを弾く喜びを思い出し、浅葉や教室の仲間たちとの関係も深まっていく。けれど、自分は彼らを欺いている。その罪悪感が、日に日に重くなっていきます。
読みどころ
実際にあった音楽教室と著作権団体の訴訟を思わせる設定ですが、中心にあるのは、心に傷を抱えた一人の青年の回復の話です。チェロの演奏場面の描写が美しく、クラシックに詳しくなくても音が聞こえてくるよう。本屋大賞でも上位に入った作品です。
こんな人に
おすすめしたいのは。昔やめてしまった習いごとが、今もどこか心に引っかかっている人。
2025年に文庫になりました。読みながらチェロの曲を流すと、雰囲気がさらに増します。
向かないかもしれない人
事件の謎解きや派手な動きを読みたい人は、拍子抜けするかもしれない。中心は傷を抱えた青年の回復で、潜入の緊張も静かに進む。
比べ読み
『常設展示室』原田マハ
芸術を題材にしても、知識がなくても追える点は共通。『常設展示室』は一枚の絵の前で女性たちが何を思うかを六つの短い話で見せる。『ラブカは静かに弓を持つ』は潜入調査という緊張を抱えた長編で、チェロの演奏場面が軸になる。短く区切りたいなら『常設展示室』、腰を据えて一人の回復を追うならこちら。
『そして、バトンは渡された』瀬尾まいこ
『そして、バトンは渡された』は家族の形が何度も変わる女子高生の話で、食卓の場面が明るい。『ラブカ』は身分を隠して音楽教室に通う罪悪感が、日を追うごとに重くなる。読みやすさはどちらも星5つ。気持ちを軽くしたい日は『バトン』を、張りつめたものを抱えながら読みたい日はこちらを。








