あらすじ
小舟の上で、老人はカジキに語りかけ、自分の手に語りかけ、少年がいてくれたらと何度もつぶやきます。手は傷つき、食べ物も尽きていく。それでも老人は綱を放さない。そしてようやく仕留めた獲物を舟に縛りつけて港を目指す帰り道に、新たな試練が待ち受けています。
読みどころ
ほとんど老人一人と海だけの話なのに、最後まで緊張がゆるまない。文章は短く、飾りがなく、それでいて一文ごとに重みがあります。薄い本なので、一日で読めて、何年たっても思い出す一冊になるはず。
こんな人に
おすすめしたいのは。負けると分かっていても、最後まで戦い抜く話が好きな人。
福田恆存の訳です。作者はこの作品を発表したのち、1954年にノーベル文学賞を受けました。
向かないかもしれない人
登場するのはほぼ老人と海だけで、会話や人間関係の動きはわずかです。にぎやかな展開や多くの人物の絡みを求める人には、単調に映るかもしれません。
比べ読み
『潮騒』三島由紀夫
海と漁師を描いた薄い二冊ですが、色合いはずいぶん違います。『潮騒』は伊勢湾の小島で若い漁師と海女が恋をする明るい話、『老人と海』は老いた漁師がひとり小舟で大魚と向き合う、緊張の途切れない話です。古典に軽やかに入りたいなら三島を先に、短く硬い文の重みを味わうならヘミングウェイを。
『砂の女』安部公房
追い込まれた男が抗い続ける話として並びます。『砂の女』は砂の穴の底の家から抜け出せなくなる男の不条理劇で、読みやすさは星3と少し手ごわい。こちらは傷ついた手で綱を握る老人と海だけの話で、文は短く飾りがありません。先にヘミングウェイで粘る姿を見てから、安部公房の自由をめぐる問いへ進む順が入りやすい。








